お知らせ・スタッフブログユーカリ総合法律事務所からのお知らせです

親子交流について

2026.07.02 掲載スタッフブログ

1 親子交流制度の導入

かつては、離婚後、親権者または監護者にならなかった一方親が、子供に面会したり、一緒に時間を過ごしたり、連絡を取り合うことを「面会交流」と呼んでいました。しかし、令和8年4月1日に施行された改正民法では「面会交流」は「親子交流」に改められました。「面会」という言葉からは、短時間の交流というニュアンスが強く出てしまうところ、本来親子の交流は一方親の下に宿泊を伴う滞在をしたり、SNS上での交流をしたりなど様々な形態が考えられるからです。しかし、親子交流の実現に向けた法的見直しは単に制度の名前が変わったことにとどまりません。

 

2 婚姻中別居の場合の親子交流

「面会交流」はあくまでも離婚後の親子の交流を認めたものであり、婚姻中別居の場合の親子の交流については定められていませんでした。しかし改正民法では、婚姻中別居の場合の親子交流を明文で定めました。

 婚姻中別居の場合の親子交流のルールは以下のとおりです。

①婚姻中別居の場合の親子交流について必要な事項は、父母の協議で定める。

②①の協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所の審判等によって定める。

③家庭裁判所は、必要があるときは、父母の協議や審判等の定めを変更することができる。

④親子交流については子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

 

 3 父母以外の親族との交流

「面会交流」は子と父または母の交流について定めた制度でした。しかし、改正民法では、父母が離婚しているか否かに関わらず、家庭裁判所が審判等において、家庭裁判所が「子の利益のため特に必要があると認めるとき」は父母以外の親族と子との交流を認めることが明文で定められました。

 ただし、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」とは、子の不安定な心理状態を回復させ、健全な成長を促し、子の自立を助けることにつながる場合(例:祖父母が多忙な父母に代わって、現実に子を育てていたような場合)を指すと考えられており、現実には、「子の利益のため特に必要がある」となかなか認められない可能性があります。

 そして、父母以外の子の親族も子との交流について家庭裁判所に審判の請求をすることができます。ただし、「当該親族と子との交流についての定めをするため他に適当な方法」がない場合に限られます。(例:父母の一方の死亡や行方不明等の場合)

また、子の直系尊属(例:祖父母)及び兄弟姉妹以外の者については、過去に当該子を監護していた者に限って審判の請求ができる点にも注意が必要です。

 

4 試行的親子交流の実施

試行的親子交流とは、試験的に親子交流を実施し、その結果を裁判所が把握することによって、より適切な親子交流の形態を模索する制度です。

「面会交流」の下では、運用上、審判の途中で家庭裁判所内等において試行的に面会交流が行われてきましたが、令和8年4月1日施行の改正家事事件手続法では、親子交流の試行的実施ができることが明文で定められましたので、今後は試行的親子交流を積極的に活用することが期待されます。

 父母以外の親族で子との交流を拒否されてしまったケース、別居親に子との交流を拒否されてしまったケースなどでは、今回の法改正により、子との親子交流ができるようになる可能性がありますので、子供とお会いできずお困りの方は、専門家にご相談ください。

離婚をするために準備すること

2026.06.08 掲載スタッフブログ

離婚をするためには、配偶者と話し合う必要がありますが、話し合いで解決できないときは、家庭裁判所での調停、審判を申し立てることになります。そのために準備しておくと良いポイントは以下のとおりです。

1 別居中の生活費を確保する

離婚を前提に配偶者と別居をしても扶養義務がなくなるわけではないので、収入の少ない方が収入の多い方へ生活費(法的には「婚姻費用」といいます。)の支払いを請求できます。相手が「もう夫婦じゃない」と言って支払いを拒んだり、口約束はあるが支払いが続かなかったり、当事者間協議でまとまらない場合、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てることになります。

実務上は、調停の申立日を基準に、それ以降の婚姻費用の支払いを話し合い、審判を行いますので、配偶者から支払いがない場合、早めの申立てをすることが重要です。

なお、婚姻費用の支払いは、扶養義務に基づくので、離婚が成立すると扶養義務がなくなることから、離婚時で婚姻費用の支払いは終了となります。

2 離婚協議に向けての準備

離婚をするにあたって決めなければならないことは、次のとおりです。

・未成年者の子どもがいる場合、親権者をどうするか。

・未成年者の養育費

・財産分与

・年金分割

親権者(共同親権)や養育費については別途記事にしてありますので、そちらを参照してください。

財産分与の協議にあたっては、別居日が重要となります。財産分与は、夫婦が協力して築き上げた財産を分割するものであるため、夫婦の協力関係が終了した時点(別居日)を基準にするためです。別居をするにあたってするべき準備は、実は「別居日と、別居時点の財産資料(夫婦それぞれの預貯金残高・ローン残高等)を確保すること」です。

 

3 協議で解決できなければ調停申立て

当事者同士の話合いで解決できない場合、裁判所に離婚の調停を申し立てる必要があります。

調停申立てにあたっては、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)、養育費の請求をする場合は申立人と相手方の収入関係資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書等)、が必要になります。相手の収入が分からない場合でも、まず自分の資料(給与明細、課税証明、確定申告書等)を揃えることで、手続は進められます。相手側の資料提出は調停の中で求めていくことになります。婚姻費用分担請求の調停と離婚の調停は、同時に申し立てることができます。

資料に不足があっても申立書提出後に追完できる場合はありますが、特に「収入資料」と「別居状況の説明」は、初回期日までに整っているとスムーズに調停が進められます。

調停は申立人と相手方から話を聴き、書類を提出してもらい、双方の収入や子どもに関する費用等の事情を把握したうえで、養育費算定表、婚姻費用算定表を参考に合意を目指します。

重要なのは、調停は「感情のぶつけ合い」ではなく、収入と生活実態(子の養育状況等)で決まる局面が多いことです。だからこそ、当事者が準備できる重要な資料は次のとおりです。

収入(源泉徴収票、確定申告書、給与明細、課税証明書等)、住居費(賃料、住宅ローン、管理費)、子どもにかかる費用(保育料、学費、医療費、習い事等)、別居の経緯(別居日、連絡状況、婚費支払状況等)

調停では相手にも呼出しが行われますが、出頭しない、資料を出さないケースもあります。この場合でも、裁判所は手続を進め、話合いで解決できないときは次の段階へ進みます。

 

4 調停がまとまらないと「審判」へ進む

話合いによる解決ができず調停が不成立になった場合、審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して審判をします。

つまり、調停は「当事者の合意」、審判は「合意できない場合の裁判所判断」です。審判で必要なのは、資料です。相手が「収入ゼロ」「払えない」等と言っても、その客観性が問題になりますし、子どもの養育監護状況も、主張立証の対象になり得ます。

 

5 離婚の時期によって財産分与の請求期限が異なる

離婚をする際には、未成年の子どもがいれば親権者を定めることは必須ですが、養育費の金額、財産分与や年金分割は決めなくても離婚の届けはできます。

離婚後に財産分与、年金分割を請求することができるのですが、これには期限が定められています。2026年4月1日以降に離婚した場合は財産分与、年金分割の申立期限が5年、それ以前に離婚した方は2年となります。

したがって、先に離婚だけ成立させた場合、後から財産分与、年金分割を請求するつもりなら、離婚時期によって期限が変わることに注意が必要です。

 

所有不動産記録証明制度 〜被相続人名義の不動産のリストが取得できるようになります〜

2026.03.05 掲載スタッフブログ

1 相続登記の義務化について

2024年(令和6年)41日から、不動産の相続登記が法律で義務化されました。これにより、相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知り」かつ「その所有権を取得したことを知った日」から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。正当な理由がないにもかかわらず申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、相続登記義務化の制度開始(202441日)より前に発生した過去の相続も、義務化の対象になります。過去の相続の場合は、不動産の相続を知った日から既に3年が経過しているものも多いと思われることから、2027年(令和9年)331日までに相続登記をすれば良いとされています。

2 必ず過料が科されてしまうのか

登記官が裁判所に過料通知を行うのは、相続登記の申請義務に違反した者に対し、相当の期間を定めて相続登記の申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、「正当な理由」なく、その期間内にその申請がされないときに限られます(不動産登記規則第187条第1号)。そのため、事前に何の連絡もなく過料が科されることは、現時点ではなされない運用となっています。

正当な理由として、法務省の「相続登記の申請義務化について[1]」には、以下の事由が掲載されています。

(1)相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

(2)相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合

(3)相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合

(4)相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

(5)相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

3 相続人申告登記〜遺産分割が3年以内に成立しない場合

相続人が多い、あるいは相続人間で対立があるなどの理由で、3年以内に相続登記が間に合わない場合、「相続人申告登記」を利用することができます。

この制度を利用すると、自分が相続人であることを法務局に申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したとみなされる制度です。相続人全員の同意が得られていなくても、単独で簡易に手続きが可能であるため、相続人間で意見の対立がある場合には有用な制度です。

ただし、その後に遺産分割協議が成立した場合は、改めてその結果に基づいた登記申請が必要になります。また、相続人申告登記は、単に相続登記の申請義務を緩和するための手続きであり、不動産についての権利関係を公示するものではありません。不動産を売却したりする場合などには、相続人申告登記をしただけでは足りず、別途、相続登記の申請をする必要があります。

相続人申告登記をすると、「被相続人●●の相続人として申出があった者」として、相続人申告登記をした相続人の住所、氏名が、不動産の登記簿に登記されます。申出に登録免許税は不要です。

4 所有不動産記録証明制度〜故人の所有不動産がわからない場合

故人との関係性が薄い等の事情で、故人が所有していた不動産がわからない場合、従前は、自治体ごとに作成されている名寄帳を取得する等の方法を利用するなど、非常に手間がかかっていました。

前述の相続登記の義務化に伴い、相続人の負担を軽減するため、「所有不動産記録証明制度」が新設されました。同制度は令和8年(2026年)22日に施行されています。手数料は、書面請求の場合は、検索条件1件につき、1通当たり1600円です(令和833日時点)。

検索する際には、検索条件として、氏名または名称、ローマ字氏名、住所及び会社法人等番号を指定することができます。検索条件に基づいて、システムから抽出された不動産の情報(管轄登記所、種別(土地・建物)及び不動産の所在、不動産番号)がある場合、同情報が記載された所有不動産記録証明書の交付を受けることができます。

ただし、あくまでも法務局での検索時点で登記に反映されている不動産のみが対象になるので、審査中の登記申請がある場合や、氏名に特殊な異体字(読みが同じでも字形が異なるもの。「齋」「齊」など)が使用されている場合(一定の異体字は、システムで変換可能のようです)、登記記録上の住所・氏名と検索条件の住所・氏名が異なる場合は、検索結果として抽出されない点には注意が必要です。また、検索できる不動産はシステムに登録されている不動産のみなので、コンピュータ化されていない不動産については、検索できません。

5 遺産分割への影響

相続登記の義務化と、所有不動産記録証明制度の施行により、遺産分割でもこれらを留意した対応をすることになります。

被相続人が所有していた不動産が明確でない限りは、基本的には所有不動産記録証明情報制度を使用して所有不動産を検索することになると思われます。また、遺産分割が長期化しそうな場合には、事案に応じて相続人申告登記の申出も検討することになります。

弁護士にご依頼いただければ、所有不動産記録証明書の取得から、争いある相続人間での遺産分割協議、その後の相続登記のための司法書士のご紹介まで、サポートいたします。お困りの相続案件があれば、まずは法律相談をご検討ください。

[1] https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html#mokuji6

【改正道路交通法】近時の自転車規制の厳罰化について

2026.02.13 掲載スタッフブログ

2024年から2026年にかけて、道路交通法(以下「道交法」)の改正により、自転車(軽車両)に関する規制が大幅に強化されました。

本稿では、一連の法改正の要点を整理するとともに、これらが刑事手続および民事訴訟(損害賠償請求)の実務にどのような影響を及ぼすかについて解説します。

 

  1. 道路交通法改正の概要(刑事・行政上の責任)

近時の改正における主要な変更点は、①「ながらスマホ」の厳罰化、②「酒気帯び運転」の処罰化、③「交通反則通告制度(青切符)」の導入の3点です。

 

① 「ながらスマホ」の罰則強化(202411月施行)

従来より、自転車運転中のスマートフォン等の使用は道交法で禁止されていましたが、罰則は比較的軽微なものでした。改正により、罰則規定の適用条文が変更され、以下のように法定刑が引き上げられました。

 ・携帯電話使用等(保持)

内容: 通話のため、または画面を注視するためにスマホ等を保持して運転する行為。

改正前: 5万円以下の罰金

改正後: 6ヶ月以下の拘禁刑 または 10万円以下の罰金

・携帯電話使用等(交通の危険)

内容: 使用により交通事故等の危険を生じさせた場合。

改正前: 5万円以下の罰金

改正後: 1年以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金

 

② 酒気帯び運転の処罰対象化(202411月施行)

道交法は酒気帯び運転を禁止していますが、これまでは罰則規定(第117条の22)において「(軽車両を除く)」という除外規定が存在したため、自転車の酒気帯び運転には罰則が適用されませんでした。 改正により、この除外規定が改正されました。

 

法定刑: 3年以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金

周辺者への適用: 運転者への酒類提供、車両提供、同乗行為についても、幇助犯または独立した罪として処罰対象となります。

 

③ 交通反則通告制度(青切符)の導入(20264月頃施行予定)

道交法第125条等の改正により、交通反則通告制度の対象に自転車(16歳以上の運転者による特定違反行為)が追加されます。

対象行為: 信号無視、一時不停止、通行区分違反、携帯電話使用(保持)など。

これらの行為については、警察官から青切符及び反則金納付書(対象行為に応じ、概ね6000円または12000円)の交付がなされることになります。

また、運転者が反則金を期限までに納付しないときには行政手続から刑事手続に移行することになっています。

 

  1. 民事訴訟(損害賠償請求)実務への影響

上記の法改正は、刑事罰だけでなく、民事上の不法行為責任(民法第709条)における過失相殺の認定基準にも大きな影響を及ぼします。

 

① 「赤い本」における過失割合の評価

交通事故賠償実務において標準的に参照される「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」では、自転車側の過失要素として以下のような修正基準を設けています。

著しい過失(+10%程度の加算): 酒気帯び運転、片手運転(保持)、著しい前方不注視など。

重過失(+20%程度の加算): 酒酔い運転、故意に比肩する重大な過失など。

 

従来より、複数の裁判例がこの点を過失を加重する事実として認定してきましたが、法改正により違法性が明確化・厳罰化されたことで、今後の訴訟実務においては、これらの違反行為が「著しい過失」あるいは「重過失」に該当すると認定される可能性が高まったといえます。

 

②警察の捜査段階で作成される証拠の変化

青切符制度の導入および罰則強化により、事故等の現場において警察官による違反認定(切符処理、実況見分)が厳格に行われることになります。 これにより、民事訴訟においても「刑事記録(または反則金納付の事実)」が、過失(ルール違反)を立証する客観的かつ強力な証拠として機能し、上記のような違反類型については従来のように違反の事実自体が不明確なまま争いになる(水掛け論になる)ケースは減少すると考えられます。

 

  1. 総括

一連の道路交通法改正は、自転車を「車両」として位置づけ、その運転者に高度な注意義務と法的責任を課すものです。

刑事責任: 「ながらスマホ」「酒気帯び」には拘禁刑を含む刑事罰が科されます。

行政処分: 一般的な違反行為に対し、反則金(青切符)の納付義務が生じます。

民事責任: 上記違反行為に起因する事故では、自転車側の過失割合が10%〜20%程度加重され、損害賠償額の算定において考慮されることになります。

当事務所では、交通事故の損害賠償請求および刑事弁護に対応しております。お困りの際はご相談ください。

【共同親権の制度が導入されます】 その1

2025.12.10 掲載スタッフブログ

1 共同親権制度の導入

離婚後の未成年の子の親権について、これまでは離婚の際には父母のいずれか一方を親権者に決めなければならないとされていました。しかし、民法が改正され、従来通りの「単独親権」のほか、父母の「共同親権」とすることも選択できるようになりました。この改正法は令和8年4月1日から施行される予定です。

 

2 親権者の決め方

(1)協議離婚する際には、父母の共同親権とするか、それともいずれか一方の単独親権とするかについて、父母の協議により決めることになります。

父母の協議で決めることが難しい場合は、家庭裁判所に離婚調停や親権者指定の調停または審判の申立てを行うことができ、裁判所の手続により親権者が決定されます。

裁判離婚の場合は、家庭裁判所が決定します。

(2)「単独親権」か「共同親権」かは、どちらかが原則でどちらかが例外というものではありません。家庭裁判所は、父母と子との関係や、父と母との関係その他一切の事情を考慮して、子の利益という観点から、共同親権にするか、いずれかの単独親権にするかを決定します。

ただし、次のような場合は、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。

・父母の一方から子に対する虐待のおそれがある場合

・父母の一方から他方に対するDV(身体的暴力や心身に有害な影響を及ぼす言動)のおそれの有無やその他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき

 

3 共同親権となった場合の親権の行使方法

(1)親権の内容としては以下のようなものがあります。

ア 子の身上監護

子の居所・転居の決定、進路に影響する進学先の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定、就労許可等

イ 子の財産管理

預金口座の開設や管理等

ウ 子の身分行為の代理

15歳未満の子についての氏の変更の代理

15歳未満の子についての養子縁組の代諾

(2)共同親権の行使方法

通常、離婚後、子は父母のいずれか一方と生活することになります。そして、共同親権となった場合でも、以下のア~ウについては、父母の一方(通常は同居親)が単独で親権を行使することができます。下記ア~ウ以外の事項については、特に取り決めがない場合、父母が協議して親権を行使することになります。

ア 監護教育に関する日常の行為

日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で子供に重大な影響を与えないものは、父母で協議する必要はありません。

例)食事や服装の決定、習い事、観光目的の短期間の旅行、心身に重大な影響を与えない医療行為、インフルエンザ等通常のワクチン接種、高校生の放課後アルバイトの許可など

イ 子の利益のため急迫の事情があるとき

父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては間に合わず、子の利益を害するおそれがある場合にも、親権の単独行使ができます。

例)緊急の医療行為、入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っている場合の入学手続、DVや虐待から避難するための転居など

ウ 家庭裁判所が特定の事項について父母の一方を親権行使者として指定した場   合

父母が共同で親権を行使すべき事項(上記ア、イに当たらない場合)について、父母の意見が対立し、親権行使ができない場合、父母のいずれかの申立により、家庭裁判所が当該事項について、父母の一方を親権者行使者に指定することができます。

(3)子の監護者の指定、監護の分掌

共同親権となる場合、親権行使を巡る離婚後のトラブルをできるだけ少なくするため、以下のような方法をとることが考えられます。

ア 子の監護者を定める方法

同居親を子の監護者と定めた場合は、子の身上監護全般について同居親が単独で決定することとなります。別居親は、子の身上監護に関し口を出すことはできません。

この場合、父母が共同で親権を行使するのは、財産管理と身分行為の代理ということになります。

イ 監護の分掌に関する取り決めをする方法

「監護教育に関する日常の行為」以外の身上監護について、特定の事項を父母の一方に委ねると決めたり、父母間の分担方法を定めることができます。

(4)離婚時に共同親権を選択することとなったとしても、前述のとおり、「監護教育に関する日常の行為」は同居親が単独で行うことができますので、些細なこともいちいち離婚した父母間 で協議しなければならないというわけではありません。

ただ、「監護教育に関する日常の行為」以外については、夫婦間の協議が必要となりますので、後々トラブルになることがあらかじめ予想できる事項があれば、離婚時に取り決めをしておいた方がスムーズかもしれません。

そして、共同親権となる場合は、単独親権の場合よりも更に、子の利益という観点から父母は互いの人格を尊重し協力し合わなければならないということを、父母のいずれも念頭に置く必要があります。

養育費の支払いに関するルールが変わります

2025.09.22 掲載スタッフブログ

父母の離婚後の子の養育に関し、民法等の法律が改正され、令和8年5月までに施行される予定です。その改正の一つとして、子どもの養育費の支払いに関するルールが見直されることになりました。厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によれば、養育費の受給率は、母子世帯で28.1%、父子世帯で8.7%にとどまり、実効性のある養育費の確保が課題となっていました。そこで、養育費の支払確保に向けて、民法等の法律が改正されました。

 

1 差押え手続が容易に

改正前の法律では、離婚の際に父母の間で私的に養育費の取り決めをしていたとしても、その後、別居親が養育費の支払いを怠った場合、公正証書や、家庭裁判所の調停調書、審判書などの債務名義がない限り、別居親の財産を差し押さえることができませんでした。

そこで、今回の改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与され、上記のような債務名義がなくても、養育費の取り決めの際に父母の間で作成した合意書などの書面に基づいて、差押え手続を申し立てることができるようになりました。先取特権が付与される具体的な養育費の上限額は、今後法務省令で定められますが、子ども1人当たり月額8万円が上限となる見込みです。

なお、改正法施行前に養育費の取り決めがされていた場合には、改正法施行後に生ずる養育費に限って改正法が適用されます。

 

2 「法定養育費」制度の導入

今回の改正により、離婚の際に養育費の取り決めをしていなくても、別居親に対して「法定養育費」を請求することができるようになりました。具体的な法定養育費の額は、今後法務省令で定められますが、子ども1人当たり月額2万円となる見込みです。

また、法定養育費債権が先取特権となるため、法定養育費の支払がされない場合には、差押え手続を申し立てることができるようになりました。

なお、法定養育費の規定は、改正法施行後に離婚した場合に適用されますので、改正法施行前に離婚した場合には、従来と同様に、父母の協議や家庭裁判所の調停・審判手続により、養育費の額を取り決めることになります。

 

3 収入情報の開示や執行手続のワンストップ化

家庭裁判所の調停・審判手続では、父母の収入を基礎として、養育費の額を算定することになりますが、収入に関する資料が任意に提出されない場合に、適正な額を算定することが困難となり、手続が長期化することが問題となっていました。

そこで、手続をスムーズに進めるために、今回の改正により、家庭裁判所が当事者に対して収入情報の開示を命じることができるようになりました。

また、養育費を請求したいけれど、別居親の現在の勤務先が分からず、給与債権の差押え手続ができない場合には、改正前の法律では、財産開示手続、第三者からの情報取得手続(市区町村に対し別居親の給与情報の提供を命じる手続)などの手続をそれぞれ申し立てて、別居親の勤務先を調査する必要があり、手続が複雑なため、養育費の回収が容易ではないことが問題となっていました。

そこで、今回の改正により、差押え手続を行う場合には、地方裁判所に対する1回の申立てで、①財産開示手続→②第三者からの情報取得手続→③給与債権の差押え手続という一連の手続をワンストップで行うことができるようになりました。

 

離婚の際に養育費の取り決めをしていなかったケース、別居親に養育費を請求したが支払を拒否されてしまったケースなどでは、今回の法改正により養育費の支払がスムーズに受けられる可能性がありますので、子どもの養育費が支払われずお困りの方は、専門家にご相談ください。

当事務所代表弁護士の小見山大が関東弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長に選任されました

2025.04.24 掲載スタッフブログ

令和7年4月に当事務所代表小見山大弁護士が関東弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長に選任されました(令和4年度から4年目)。

「あなたの周りに空き地や空き家はありませんか?-所有者不明土地問題に関する新しい制度が始まりました-」

2024.12.13 掲載スタッフブログ

近年、相続登記や住所変更登記が未了であることが原因で、所有者不明の土地・建物が増えています。また、総務省が2023年に実施した「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は過去最多の9002000戸(千葉県内の空き家数は394000戸)で、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は全国で13.8%(千葉県内の空き家率は12.3%)であり、今後も増加する可能性が高いでしょう。他方で、このまま空き家を放置し続けると、ゴミの不法投棄、雑草の繁茂、害虫の発生、建物の倒壊などによって近隣住民に悪影響を及ぼすおそれがありますし、空き地や空き家を活用した公共事業や買取りを希望する民間業者の取引を阻むことにもなります。

このような問題に対処するため、改正民法では、個々の土地・建物の管理に特化した財産管理制度(①所有者不明土地・建物管理制度と②管理不全土地・建物管理制度)が新設され、20234月に施行されました。

まず、所有者不明土地・建物管理制度とは、所有者を特定できない土地・建物や、所有者が所在不明となっている土地・建物がある場合に、利害関係人が、土地・建物の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行い、裁判所が、所有者不明土地・建物の管理命令を発令し、管理人を選任する制度です。

利害関係人が申立てを行うことができますが、例えば、公共事業の実施者など不動産の利用・取得を希望する者や、共有地における不明共有者以外の共有者が利害関係人に該当すると考えられます。

所有者不明土地・建物管理人の権限は、原則として土地・建物の保存、利用、改良行為に限られますが、裁判所の許可があれば、土地・建物の売却や取壊しなどの処分行為を行うことも可能なため、この制度の活用によって、公共事業や民間取引の活性化などが期待されます。

次に、管理不全土地・建物管理制度とは、所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利・利益が侵害されまたは侵害されるおそれがある場合に、利害関係人が、土地・建物の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行い、裁判所が、管理不全土地・建物管理命令を発令し、管理人を選任する制度です。

ここでいう利害関係人とは、例えば、ひび割れや破損が生じている擁壁を土地所有者が放置しており、隣地に倒壊して被害を受けるおそれがある隣地所有者や、ゴミが不法投棄された土地・建物を所有者が放置しており、臭気や害虫発生による健康被害を受けている近隣住民などが該当すると考えられます。

管理不全土地・建物管理人の権限は、原則として土地・建物の保存、利用、改良行為に限られ、土地・建物の処分を行う場合には、所有者の同意が必要となります。

この制度の活用によって、ひび割れや破損が生じている擁壁の補修工事やゴミの撤去・害虫の駆除を管理人が行うことができ、周辺の環境改善にもつながります。

なお、区分所有建物については、所有者不明建物管理制度と管理不全建物管理制度のいずれも適用されないため、分譲マンションなどの区分所有建物の専有部分及び共用部分について、管理命令を発令できないことには注意が必要です。

所有者不明の土地・建物や管理不全状態の土地・建物についてお困りの方は、専門家にご相談ください。

当事務所代表弁護士小見山大が警察庁長官から表彰状を頂きました

2024.11.27 掲載お知らせ

当事務所代表弁護士小見山大が令和6年11月21日警察庁長官から暴力追放栄誉銀賞を頂き表彰されました。

成年後見制度について―本人の状況に応じた制度の活用が必要です―

2024.10.23 掲載スタッフブログ

Q1 父の認知症が進行し、父自身が財産管理することができなくなってしまったため、専門家に財産管理を任せることを考えています。どのような制度を使えば良いでしょうか?

 

A1 法定後見制度の活用が考えられます。

財産管理や身上監護について、判断能力が不十分になった場合に保護・支援するための制度が成年後見制度です。これには、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。

法定後見:本人が判断能力を欠いた後に、成年後見人が本人を法律的に支援する制度です(※)。

任意後見:本人の判断能力が十分な時に、あらかじめ、任意後見人や委任する事務の内容を契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度です。

※保佐人、補助人といった要件・内容等の異なる制度もあります。

 

Q1の場合には、既に判断能力を欠いている状況であり、法定後見制度の活用が考えられます。

 

Q2 成年後見制度を利用するには、どのような手続が必要になりますか?

 

A2 法定後見の場合、本人、配偶者、4親等内の親族等が家庭裁判所に後見等の開始の申立てを行い、裁判所により後見人が選任されることで、法定後見が開始します。

なお、任意後見の場合には、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見人の予定者等が公正証書により任意後見契約を締結します。その後、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立て、家庭裁判所により選任されることで、任意後見が開始します。

 

 Q3 後見人にはどの範囲の財産管理を任せられますか?

 

A3 法定後見の場合、財産に関するすべての法律行為の代理権を有するため、包括的な財産管理が可能になります。

なお、任意後見の場合には、契約で定めた範囲の代理権を有するため、本人の状況や希望に合わせて代理権の範囲を定めることができます。

 

 Q4 父の後見が開始した後、父の財産についてトラブルが生じ、相手方から訴訟を提起されました。後見人が本人に代わって訴訟に応じることになりますか?

 

A4 法定後見の場合、法定代理権を有するため、訴訟行為を代理することができます

任意後見:基本的に法定代理権がなく、訴訟行為を代理できません(※)

※本人から訴訟委任を受けた弁護士である任意後見人であれば、訴訟代理が可能です。

  

このように、法定後見と任意後見では、手続きや内容に違いがあるため、本人の状況に応じた制度を選択することが必要になります。また、紛争が生じた場合の対応にも違いが生じるため、本人の財産についてトラブルが生じた場合の備えも検討しておくことがお勧めです。