従前、自分の手で書く遺言書である自筆証書遺言は、全ての文を手書きしなければならず、日付及び氏名を自分で書いて、押印することが必須でした。
しかし、財産の内容も全て手書きで書かなければならないことは、字を書くことが少し困難となってきている人や、特に財産が多数ある場合などは大きな負担となるものであったため、改正民法(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)では自筆証書遺言の方式を緩和し、財産目録については、手書きではなくでもよいものされ、自筆証書遺言書に、パソコンで作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付して遺言書を作成できるようになりました。
これによって、全文手書きという負担が緩和され、自筆証書遺言書も作成しやすくなりました。
もっとも、上記のようにパソコン作成の目録や、通帳写しを添付する場合にも、財産目録のそれぞれ各ページ(両面印刷の場合には両面)には署名と押印が必要とされていますので注意してください。
今回の自筆証書遺言の方式緩和に関する規定は平成31年1月13日から施行されますので、終活等で遺言書作成にご興味のある方は参考になさってください。
1 はじめに
いよいよ相続に関する民法等の規定が,約40年振りに改正されます。今回は,この改正のうち,配偶者の居住権の保護について説明します。
2 配偶者の居住権の保護
相続法の改正により,配偶者が居住建物にそのまま住み続けることができるように,①配偶者短期居住権と②配偶者(長期)居住権という2つの制度が設けられました。
⑴ 配偶者短期居住権
配偶者短期居住権とは,相続開始時(被相続人が死亡した時)に,配偶者が被相続人(死亡した夫又は妻)の建物に無償で居住していた場合に,一定期間,無償でその居住建物を使用できる権利をいいます。
現行制度の下では,配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していた場合,原則として,被相続人と相続人との間で使用貸借契約が成立していたと推認されます。しかし,その居住建物が第三者に遺贈された場合や,被相続人が反対の意思表示をしていた場合には,使用貸借が推認されないため,配偶者がその建物に住み続けることができない状態になってしまいます。
そこで,配偶者の保護を図るため,今回の改正により,被相続人の意思に関わらず配偶者が一定期間居住できる権利が認められました。
配偶者短期居住権の期間については,
①配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合には,遺産分割が終了するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,
②居住建物が第三者に遺贈された場合や,配偶者が相続放棄した場合には,居住建物の所有者から配偶者短期居住権の消滅の申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間
となります。つまり,配偶者は,最低6か月間は居住が保護されることになります。
⑵ 配偶者(長期)居住権
配偶者居住権とは,配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について,終身又は一定期間,無償でその使用を認める権利をいいます。
以下,具体例を挙げて説明します。A男が死亡し,相続人は,妻B子と子C男の2人,A男の遺産は,自宅(1000万円)と預貯金(2000万円)があるとします。
現行制度の下では,配偶者が居住建物に住み続けるためには,遺産分割で居住建物を相続することが考えられます。この場合,B子とC男の法定相続分は各2分の1(各1500万円)ですので,B子は自宅(1000万円)と500万円の預貯金を,C男は1500万円の預貯金を相続することになります。そうすると,B子は,住む場所は確保できる一方で,500万円の預貯金しか受け取ることができず,生活費がいずれ不足する可能性があり,今後の生活に不安が残ることになります。
しかし,改正法の下では,B子は自宅に住み続けながら,預貯金もある程度受け取ることができるようになります。つまり,例えば,配偶者居住権の価値が500万円だとすると(価値の算定方法はここでは割愛します),B子は,他に1000万円の預貯金を受け取ることができるため,自宅に住み続けながら,ある程度の生活費を確保することができるようになります。他方,C男は,配偶者居住権という負担付きの建物所有権(500万円の価値)と預貯金1000万円を相続することになります。
なお,配偶者(長期)居住権が認められるのは,遺産分割協議や調停において,共同相続人間で配偶者居住権を認める合意ができた場合や,配偶者居住権を遺贈する旨の遺言があった場合など,一定の場合に限られますので,注意が必要です。
3 施行日
以上ご説明しました配偶者の居住権に関する規定は,2020年4月1日より施行される予定です。配偶者居住権は,施行日以後に開始した相続について適用されます。
刑事裁判に関して、本年6月から刑事免責制度と協議・合意制度が施行されました。
この2つの制度は、いずれもこれまで有効な証拠がなく、立件が困難だった組織犯罪等について、有効な証拠を獲得しようとして作られた制度です。
ところが、この2つの制度は、その内容や対象がかなり違います。
そこで、この2つの制度について、2回に分けて説明しようと思います。
刑事免責制度
刑事免責制度は、他人の刑事裁判の法廷に呼び出された証人(共犯者などの関係者)について、その証言を証人自身の犯罪について不利に扱わないとすることで、証人から有効な証言がされることを期待したものです。
一般的に、他人の刑事裁判の法廷に呼び出された証人には、知っていることを話さなければならない義務、つまり証言義務があります。そのため、証人が正当な理由がないのに証言を拒絶した場合は、制裁の対象になります(刑訴法160条1項、10万円以下の過料)。(なお、宣誓した証人が虚偽の供述をした場合は、偽証罪(刑法169条)の制裁の対象になります(3月以上10年以下の懲役)。)
ですが、証人の立場でみれば、自分が証人として証言することが強制されているのに、証言した内容を自分の犯罪の刑事手続で不利益な証拠として使われてしまうならば、これは自分の犯罪について不利益な供述を強制されてしまうことになります。これでは憲法38条1項の「自己に不利益な供述を強制されない」という規定に反することになります。
そこで、刑事訴訟法は「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる」(刑訴法146条)という供述拒否権を証人に認めており、証人は自分自身の罪に関係する自分に不利益な供述を拒否できることになっています。
今回新設された刑事免責制度(刑訴法157条の2)は、①刑事裁判の公判において、証人が尋問に応じてした供述(及びこの供述をもとに得られた証拠)は、一部例外を除き証人に不利益な証拠とすることができない(同1号)、②その代わりに、証人の証言拒絶権を認めない(同2号)、というものです。
具体的には、検察官が刑事免責制度による証人尋問をすることを裁判所に請求し、裁判所がこの制度での証人尋問をすることを決定して、この制度での証人尋問がなされることになります。
この制度は、結局のところは、今まで共犯者などの証人が「自分の罪の裁判で不利になるから」という理由で証言を拒否できたところ、「証言を証人の不利には使わない」という条件にすることで証言拒否を許さないことにし、証人の証言を強制することで、刑事事件で共犯者などの証人からの有効な証言が出ることを期待したものです。
しかし、証人からすれば、これは単に公判の証人尋問でした供述が自分に不利に使われないというだけの利益しかなく、自分にとってそれ以上の積極的な利益がない以上、他人の事件について積極的な証言をするだけのインセンティブがないものといえます。そのため、この制度の有効性は必ずしも高くないのではないかという見解もあります。
実際、報道によれば、先日この制度が初めて使用された証人尋問が実施されましたが、証人は「覚えていない」との供述を繰り返し、検察側にとって有効な供述が出てこなかったとされています。
そこで、もっと証人に有効な証言をする強いインセンティブを与える制度として同時に施行されたのが、次回説明する「協議・合意制度」になります。
当事務所所属の小見山大弁護士が
平成28年10月27日の「暴力団追放県民の集い」において
多年にわたる公益財団法人千葉県暴力団追放県民会議の理事としての多大な貢献をたたえられ千葉県警察本部長及び公益財団法人千葉県暴力団追放県民会議理事長の連名で感謝状を授与されました。
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