お知らせ・スタッフブログユーカリ総合法律事務所からのお知らせです

新型コロナウイルス感染予防及び拡大防止について

2020.04.13掲載お知らせ
  • マスクの着用

 新型コロナウィルス感染予防及び拡大防止のため、弁護士およびスタッフがマスク着用で対応しております。予防の一環ですので、ご了承頂きますようお願い致します。

  • ご来所されるお客様へのお願い。

・マスクをお持ちの方は着用いただき、感染予防対策へのご協力お願い致します。

・相談および打ち合わせの日、発熱のある方、体調不良のお客様は事前にお電話で申告いただき、相談日を再調整していただきますようお願い致します。新型コロナウィルスの初期症状等をお持ちの方の相談はやむなくお断りさせていただく場合がございます。

・当事務所ではご来所時に、手指の除菌にご協力いただくようお願い致しております。

建物賃貸借契約の敷金の扱いについて

2020.01.24掲載スタッフブログ

令和初の新年を迎えてから、早くも一月が経とうとしています。

 本年も当事務所をよろしくお願いします。

 さて、2020年といえばいよいよ東京オリンピックの年ですが、法律の業界では、民法の大幅な改正がある年でもあります。

 今回の改正は120年ぶりの大改正とも言われており、契約法の基本原則や基本的な時効期間など、民法の根本に関する規定から大きな変更があります。

 今回は、これらの中から身近な話題として、建物賃貸借契約の敷金の扱いに関する事項を取り上げてご紹介したいと思います。

 アパートや賃貸マンションなどの賃貸借契約をするとき、借主が敷金を差し入れることが通常ですが、いままでの民法では、この敷金についての明文規定がありませんでした。そのため、入居に際して借主が支払うお金の何が敷金扱いになるのか、部屋を退去する場合に、敷金がいつ返ってくるのか、いくら返ってくるのかについて、民法上の規定がなく、これまでに裁判になったケースの裁判所の判断例などの積み重ねによって解決が図られていました。

 ですが、現実にトラブルになりやすい事柄についてはやはり民法上の規定があった方がいいという考えもあり、今回の改正では、①何が敷金となるのかの定義の定め、②敷金の返還時期の定め、また③敷金から差し引かれることが多い原状回復の範囲に関する定めが、新たに追加されることになりました。

①敷金の定義について

 改正前は、何が敷金になるのかの明文の定めはなく、実際には「権利金」や「保証金」といった名称を使われることもあり、その名称の違いによるトラブルも発生していました。

 そこで、改正法では、どのような名目・名称であっても、借主の貸主に対する金銭債務を担保する目的で、借主が貸主に交付する金銭のことを「敷金」と呼ぶものと明記されました(改正法622条の2)。

 この借主の貸主に対する金銭債務とは、未払いの賃料のほか、退去時の原状回復にかかる費用も一部も含まれることになります。

②敷金の返還時期について

 退去に際し、貸主が借主に対し、いつ敷金を返還しなければならないかについても改正前には明文の定めがなく、最高裁判所の判例で、借主が建物を退去し、明渡が完了したときとされていました。

 改正法では、敷金の返還時期について、最高裁の判例とほぼ同様に、賃貸借が終了し、貸主が賃貸物の返還を受けたときとする明文規定が置かれました。

③原状回復の範囲について

 また、退去に際して借主が負う原状回復義務(実際にはクリーニング代・修繕費として敷金から差し引かれるものになります)について、これまでは明文の定めがなく、トラブルが多く発生していました。

 そこで、改正法では原状回復の範囲について、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明文で規定され、このような損耗や経年変化の回復費用は敷金から差し引かれないことが明文で規定されました。

 もっとも、さらに具体的に「何が通常の使用収益による損耗・経年変化にあたるのか」については、現状で国土交通省が作成したガイドラインなどをもとに判断されることになります。具体的には、家具の設置による床やカーペットの凹み等の設置跡や、テレビ・冷蔵庫等の後の壁の黒ずみなどが、通常の使用収益による損耗・経年変化にあたりますが、タバコのヤニ汚れやペットによる柱の傷などは、これにあたらないとされています。

 敷金改正の施行日は4月1日。施行日以降の賃貸借契約について、改正後の規定が適用されることになります。

 

永棟琢也弁護士が加入しました

2019.12.17掲載お知らせ

永棟琢也弁護士(72期)が加入しました

弁護士紹介欄をご参照ください

相続法改正 ~遺留分制度に関する改正~

2019.09.25掲載スタッフブログ

 平成30年7月に民法の相続に関する規定を改正する法律が成立しました。改正された法律は大部分が令和元年7月1日から施行されました。
 今回は、改正された法律のうち、遺留分制度の改正の概要をご紹介します。
 遺留分とは、被相続人の財産が特定の者に財産が贈与等された場合でも、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人(遺留分権利者)に、一定の財産の取戻しを認める制度です。
 改正前の民法では、遺留分権利者が被相続人から贈与等を受けた者に対し、遺留分減殺請求をすると、遺留分を侵害している贈与等はその侵害額の限度で効力を失い、減殺された財産はその限度で遺留分権利者のものとなります。現物返還が原則で価額弁償は例外となっていました。
 例えば、被相続人の相続人が長男、長女の2人、被相続人が長女に500万円を生前贈与し、土地建物(評価額が土地1500万円、建物500万円)を長男に相続させる旨の遺言をしていた場合(その他に遺産はないものとします)、以下のように処理されるのが原則でした。
長女の遺留分が侵害された額
(500万円+1500万円+500万円)× 1/2 × 1/2 - 500万円=125万円
生前贈与    土地    建物   遺留分率  法定相続分  生前贈与
 この125万円の遺留分侵害額を不動産が複数ある場合には価額の割合に応じて割り付けられるため、
建物に31万2500円(=125万円×500万円/(500万円+1500万円))
土地に93万7500円(=125万円×1500万円/(500万円+1500万円))
 この分が共有持分として登記されることになります。
 そうすると、建物について、「長男の共有持分500万分の468万7500、長女の持分500万分の31万2500」、土地について、「長男の持分1500万分の1400万62510、長女の持分1500万分の93万7500」という持分割合で登記されることになります。そして、この共有状態を解消するために共有物分割訴訟を提起して争うことになります。しかし、遺留分減殺請求調停・訴訟をした後、共有物分割訴訟をしなければならないこととなり、解決までに非常に時間がかかってしまいます。また、不動産の権利関係が複雑になってしまいます。
 改正後の民法では、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することができることとなりました。
 上記の例では、長女は、長男に対し、125万円の支払いを請求することができるのみとなります。
 遺留分の算定方法についても、改正前の民法では、遺留分の計算に算入される贈与の範囲について、相続人以外の者に対する贈与は相続開始の1年以内、相続人に対する贈与で特別受益に当たるものはすべてとされていました。改正後の民法では、相続人に対する特別受益に当たる贈与については、相続開始の10年以内にされたものに限って算入することとなり、算入される範囲が限定されました。
以上

不貞行為と離婚の慰謝料

2019.04.17掲載スタッフブログ


1 離婚慰謝料に関する最新判例
 「離婚慰謝料 特段の事情ない限り、配偶者の不倫相手に請求できず 最高裁が初判断」(毎日新聞2019年2月19日)などのニュースをご覧になり,不倫されても慰謝料が請求できないの!?と思われる方もいるかも知れません。
 〇最高裁平成31年2月19日第三小法廷判決
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/422/088422_hanrei.pdf
 今回,この判決を踏まえて,不貞行為に対する慰謝料請求について解説します。

2 不貞行為と不法行為責任
(1)法律上の根拠
(不法行為による損害賠償請求)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 実務上,不貞行為は不法行為として扱われるため,この条文から不倫相手に慰謝料請求ができることとなります。
 少し分析的にいいますと,不貞行為により「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法律上保護される利益を侵害した者」は,損害を賠償する責任を負います。
(*諸説ありますが,内田貴 『民法Ⅳ補訂版』 東京大学出版会 26頁 によります)
 ここで注意すべき点を指摘しておきます。不貞行為による不法行為は「婚姻共同生活の平和」を侵害した場合に限られるので,既に冷え切った婚姻関係の下(例えば,性格の不一致などで先に別居していたときなど)では,「婚姻共同生活の平和」が既にないので,不貞行為が不法行為となりません。
 また,不法行為者は損害を賠償する責任を負うので,損害が発生しないと賠償されません。そして,損害の範囲は,不貞行為が原因で受けた損害のみとなります。(「不法行為と損害の因果関係」が必要と言い換えられます。)そこで,次に損害について考えていきます。

(2)不貞行為による損害
 不貞行為により婚姻相手が取られてしまったことが損害とお考えの方もいるでしょう。確かに,お気持ちは察しますが,婚姻相手は物ではないので,法的にこのような損害は認められません。
 そこで,不貞行為による損害は,次の2つに大別できます。
   ①婚姻共同生活の平和の破壊による直接的な精神的苦痛
   ②婚姻共同生活の平和の破壊の結果の婚姻関係破綻(=離婚など)による精神的苦痛
 一般に,①の損害に対する請求を不貞慰謝料,②の損害に対する請求を離婚慰謝料と区別されることが多いようです。
 ②は①の次に続くものなので,これのように分ける必要がないようにも思えます。
しかし,この区別は「時効」によって全く異なる結果を迎えます。

(3)不法行為の時効
 時効(消滅時効)は,権利を行使せずに一定期間経過すると権利が消滅する制度のことです。不法行為による損害賠償請求権は,損害と加害者を知った時から,請求せずに3年経過すると権利が消滅します(民法第724条)。
 具体的には,①の損害については,損害の発生日が不貞行為を知った日なので,不貞行為を知って不倫相手を突き止めた後3年以内に不倫相手に慰謝料を請求しなければ,請求権が消滅します。
 一方,②の損害について,損害の発生日は離婚した日なので,不倫相手を突き止めた日と離婚した日のいずれか遅い方の日から3年以内に不倫相手に慰謝料請求しなければ,請求権が消滅します。

3 最新判例の分析
(1)事案の概要
 結婚15年後,妻が自らの勤務先の男性と不貞行為に及ぶようになり,その約1年後に夫が妻の不貞関係を知った。その時点で,妻と不倫相手は不貞関係を解消した。そして,不貞関係解消の5年後に夫婦は離婚し,夫が不倫相手に対し離婚に伴う慰謝料請求した,という事案でした。
 少し補足しますと,不貞関係の解消は請求から5年以上も前のことなので,不倫相手に対する①の損害に対する慰謝料,つまり不貞慰謝料は請求できない状況でした。そこで,②の損害に対する慰謝料,つまり離婚慰謝料を請求したという経緯です。

(2)最高裁の判断
 最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄」と理由を付して,「当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」。不倫相手に対して,このような「特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」と結論付けています。

(3)判例の分析
 つまり,最高裁は,離婚は夫婦間で決められ,不倫相手が離婚を余儀なくさせるような振る舞いがなければ,離婚させることを意図していたといえず,特段の事情がなくなり,不倫相手は離婚の結果に対する責任を負わないとしています。
 このような最高裁の論理構造から推察すると,②の「婚姻共同生活の平和の破壊」が当然「離婚」の結果をもたらさないと考えているといえるでしょう。
 つまり,訴える者(原告)は,不倫相手による不貞行為と夫婦の離婚との因果関係の証明が別途必須ということでしょう。

(4)判例の影響
 このように本判例は,不倫相手に対する離婚慰謝料の請求について,因果関係の証明というハードルを明確にしています。一方,不貞慰謝料について何も触れていません。
 つまり,不倫相手に対する不貞慰謝料請求権が時効消滅していなければ,不倫相手に対して不貞慰謝料の請求は当然可能です。
 よって,不倫相手に対する慰謝料の請求は,不貞行為が解消されて3年以内に請求するように注意すべきであり,この場合でも不貞行為が請求の3年以内であることの証拠が必要でしょう。
 また,不貞行為解消の3年経過後の請求であれば,不倫相手が離婚を意図していたといえるような証拠を集めるように努力する必要がありそうです。

当事務所所属の小見山大弁護士が千葉県弁護士会会長に就任しました。

2019.04.15掲載スタッフブログ

当事務所所属の小見山大弁護士が
平成31年度千葉県弁護士会会長に就任しました。

成年年齢の引き下げと離婚後の養育費の支払終期

2019.03.07掲載スタッフブログ

 2018年6月に民法の一部が改正され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることとなりました。この新しい法律は、2022年4月1日から施行されます。
 民法上、「成年に達しない子は、父母の親権に服する」とされており、夫婦が離婚する際に未成年の子がいる場合は、父母のいずれか一方を親権者として指定しなければならないことになっています。これまでは、離婚する夫婦間に20歳未満の子がいる場合にその親権者を決めなければなりませんでしたが、新法施行後は、18歳未満の子についてのみ親権者を決めることになります。
 それでは、離婚後、子を養育していない親から子を養育する親に対する養育費の支払義務の終期についても、法改正に伴い変更されるのでしょうか。すなわち、家庭裁判所では、従来、養育費の支払いについては子が「満20歳に達する日の属する月まで」とすることが多かったのですが、これも成年年齢引き下げに連動して「満18歳に達する月まで」ということになるのでしょうか。
 これについては、必ずしもそのようにはなりません。養育費の支払対象となる子は、「未成熟子」すなわち自己の資産又は労力で生活できる能力のない子をいうと解されており、「未成熟子」と「未成年者」とは必ずしもイコールではないのです。そして、子の大半が高校卒業後に大学や専門学校等の高等教育機関へ進学し、18歳で経済的に自立している子は少なくなっている現状においては、養育費の支払いを18歳に達するまでとすることは極めて非現実的であるといえます。
 本改正法の成立にあたり、参議院では「成年年齢と養育費負担終期は連動せず未成熟である限り養育費分担義務があることを確認するとともに、ひとり親家庭の養育費確保に向けて、養育費の取り決め等について周知徹底するなど必要な措置を講ずること」等の付帯決議がなされています。
 このことからしても、家庭裁判所の養育費に関する従来の取り扱いには影響はなく、養育費の支払終期が引き下げられることはないと考えられます。
 

刑事免責制度と協議・合意制度について(その2)

2019.01.15掲載スタッフブログ

少し間が開いてしまいましたが、前回の刑事免責制度に引き続いて、昨年6月より運用が始まった協議・合意制度についてご説明します。
この協議・合意制度は、一般に「日本版司法取引」と呼ばれていて、最近は大企業の経済事件について、この制度が実際に利用されたという報道もあります。

この制度を一言で言えば、組織犯罪・企業犯罪などの特定の種類の犯罪について、被疑者・被告人(以下「被疑者等」といいます)が、共犯者などの他人の犯罪に関する供述や証言、証拠提供などの捜査協力をする見返りに、自分の犯罪については不起訴や略式起訴などの軽い処分にすることを、捜査機関との間で約束するものです。

具体的に説明していきます。

1 対象となる犯罪が限定されている
司法取引制度は、外部からその実態がわかりにくい組織犯罪や企業犯罪について、捜査機関が共犯者や内部者等から情報を取得し、事件の全容を把握して、処罰すべき「本命」の犯人を起訴し有罪判決を得る効果を期待したものとされています。
そのため、司法取引によって処分が軽減等される対象となる犯罪も、組織犯罪や企業犯罪として多く見られるものに限定されています。
具体的な犯罪名は結構多く定められていますが、おおむね、
・偽造罪、詐欺罪・組織的詐欺罪、恐喝罪、爆発物犯罪、銃器犯罪、薬物犯罪など、組織犯罪として多くみられるもの、
・贈収賄罪、業務上横領罪や会社法上の特別背任罪、脱税等の税務犯罪、カルテルや談合等の独占禁止法違反、有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー取引等の金融商品取引法違反などの経済犯罪など、企業犯罪として多くみられるものが、対象となる犯罪として定められています。
他方、殺人罪や強姦罪などは、司法取引による処分の軽減の対象とはなりません。

2 他人の刑事事件についての捜査等に協力をすることを約束すること
 諸外国の司法取引制度には、①自分の犯罪を自白して捜査に協力する見返りに、自分に対する軽い処分を求めるもの(自己負罪型)と、②共犯者などの他人の犯罪の捜査などに協力する見返りに、自分に対する軽い処分を求めるもの(捜査等協力型)の2種類があります。
 今回、我が国で採用されたのは、このうち②の捜査等協力型になります。
 被疑者等がする具体的な協力の内容としては、
①共犯者などの他人の犯罪の捜査について、捜査機関、つまり検察官や警察官(刑事)等の取り調べに対して真実の供述をすること
②他人の犯罪の刑事裁判において、証人として出廷し、真実の供述をすること
③捜査機関による他人の犯罪の捜査について、証拠を提出するなどの協力をすること
の3つが定められています。

3 見返りとして、自分の刑事処分を軽くすることを約束すること
 被疑者等は、他人の犯罪捜査に協力する見返りとして、自分の犯罪については軽い処分にすることを約束することができます。
 具体的な処分軽減としては、被疑者等の処分を決める検察官において、
①不起訴にしたり、起訴済みの場合は起訴を取り下げる
②刑罰の軽い犯罪として起訴したり、起訴済みの場合も刑罰の軽い犯罪に変更する
③正式裁判ではなく、略式裁判(罰金刑になる)や、即決裁判(執行猶予になる)として起訴する
④正式裁判になったとしても、検察官の求刑の時に通常より軽い刑を求める意見を言う
などがあります。
 ただし、あくまで刑事処分自体の軽減ですので、例えば被疑者等を釈放させるといったような約束をすることはできません。

4 弁護人の関与・書面の作成
 被疑者等が、捜査機関との間でこれらの取引や約束をするとしても、その約束が捜査機関に一方的に都合のいいものになる可能性があります。
 また、この約束が口約束になっている場合、どちらかが約束を破ることもあり得ます。
 そこで、この司法取引の内容についての協議は、原則として弁護人が関与しなければならず、約束をするについても弁護人の同意が必要とされていて、被疑者等だけで一方的に不利な約束をすることにならないよう配慮する規定が置かれています。
 また、双方の約束の内容は、検察官、被疑者等、弁護人の三者連名による書面でその内容を明らかにするという規定も置かれています。

5 約束を破った場合の処理・制裁
 このような約束をしたとしても、残念ながらどちらかがその約束を守らないという事態はあり得ます。
 また、検察官の処分軽減に対し、裁判所がこれを認めない決定をすることもあり得ます。例えば、裁判所が刑の軽い犯罪としての起訴を認めなかったり、検察官の求刑よりも重い刑罰を言い渡したり、略式裁判や即決裁判にすることを裁判所が認めなかったりすることがあり得ます。
 このような場合には、(結果的にせよ)約束が守られなかった側は、この約束から離脱することができます。

 そして、検察官が不起訴とする約束を破って起訴したり、略式裁判や即決裁判とする約束を破って正式裁判の起訴をしたりした場合、裁判所は公訴を棄却して、裁判を打ち切ることになります。また、検察官が約束を破った場合は、被疑者等が約束によってした他人の犯罪についての供述や提出した証拠等は、その他人の犯罪の裁判でも証拠にすることができないことになります。
 他方、被疑者等が約束を破って真実の供述をしなかった場合は、検察官は約束から離脱して本来の処分をすることができるようになるほか、被疑者等が裁判で証人として嘘の供述をした場合は3か月以上10年以下の懲役(偽証罪)に、捜査機関の取り調べに対して嘘の供述をしたり偽の証拠を提出したりした場合は5年以下の懲役になることがあります。

6 協議・合意制度のメリット、危険性
 協議・合意制度は、組織犯罪や企業犯罪に関わった者に不起訴などの利益を与えて、「本命」の被疑者に対する捜査に協力させるもので、捜査機関側のメリットは大きく、また自分の犯罪について不起訴等有利な処分を約束してもらえる協力者側の被疑者にも有利なものといえます。
 しかし、協力者側の被疑者が、他人を陥れようと思ったり、自分に有利な刑事処分のために捜査機関に迎合したりして、他人にとって不利となる虚偽の供述をする可能性もあります。つまり、冤罪が発生する危険が残るという見解も強く指摘されています。

自筆証書遺言に関する改正

2018.12.19掲載スタッフブログ

従前、自分の手で書く遺言書である自筆証書遺言は、全ての文を手書きしなければならず、日付及び氏名を自分で書いて、押印することが必須でした。
しかし、財産の内容も全て手書きで書かなければならないことは、字を書くことが少し困難となってきている人や、特に財産が多数ある場合などは大きな負担となるものであったため、改正民法(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)では自筆証書遺言の方式を緩和し、財産目録については、手書きではなくでもよいものされ、自筆証書遺言書に、パソコンで作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付して遺言書を作成できるようになりました。
これによって、全文手書きという負担が緩和され、自筆証書遺言書も作成しやすくなりました。
もっとも、上記のようにパソコン作成の目録や、通帳写しを添付する場合にも、財産目録のそれぞれ各ページ(両面印刷の場合には両面)には署名と押印が必要とされていますので注意してください。
今回の自筆証書遺言の方式緩和に関する規定は平成31年1月13日から施行されますので、終活等で遺言書作成にご興味のある方は参考になさってください。

「相続法改正のポイント~配偶者の居住権の保護~」

2018.12.06掲載スタッフブログ

1 はじめに
いよいよ相続に関する民法等の規定が,約40年振りに改正されます。今回は,この改正のうち,配偶者の居住権の保護について説明します。

2 配偶者の居住権の保護
相続法の改正により,配偶者が居住建物にそのまま住み続けることができるように,①配偶者短期居住権と②配偶者(長期)居住権という2つの制度が設けられました。

⑴ 配偶者短期居住権
配偶者短期居住権とは,相続開始時(被相続人が死亡した時)に,配偶者が被相続人(死亡した夫又は妻)の建物に無償で居住していた場合に,一定期間,無償でその居住建物を使用できる権利をいいます。
現行制度の下では,配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していた場合,原則として,被相続人と相続人との間で使用貸借契約が成立していたと推認されます。しかし,その居住建物が第三者に遺贈された場合や,被相続人が反対の意思表示をしていた場合には,使用貸借が推認されないため,配偶者がその建物に住み続けることができない状態になってしまいます。
そこで,配偶者の保護を図るため,今回の改正により,被相続人の意思に関わらず配偶者が一定期間居住できる権利が認められました。
配偶者短期居住権の期間については,
①配偶者が居住建物の遺産分割に関与する場合には,遺産分割が終了するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,
②居住建物が第三者に遺贈された場合や,配偶者が相続放棄した場合には,居住建物の所有者から配偶者短期居住権の消滅の申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間
となります。つまり,配偶者は,最低6か月間は居住が保護されることになります。

⑵ 配偶者(長期)居住権
配偶者居住権とは,配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について,終身又は一定期間,無償でその使用を認める権利をいいます。
以下,具体例を挙げて説明します。A男が死亡し,相続人は,妻B子と子C男の2人,A男の遺産は,自宅(1000万円)と預貯金(2000万円)があるとします。
現行制度の下では,配偶者が居住建物に住み続けるためには,遺産分割で居住建物を相続することが考えられます。この場合,B子とC男の法定相続分は各2分の1(各1500万円)ですので,B子は自宅(1000万円)と500万円の預貯金を,C男は1500万円の預貯金を相続することになります。そうすると,B子は,住む場所は確保できる一方で,500万円の預貯金しか受け取ることができず,生活費がいずれ不足する可能性があり,今後の生活に不安が残ることになります。
しかし,改正法の下では,B子は自宅に住み続けながら,預貯金もある程度受け取ることができるようになります。つまり,例えば,配偶者居住権の価値が500万円だとすると(価値の算定方法はここでは割愛します),B子は,他に1000万円の預貯金を受け取ることができるため,自宅に住み続けながら,ある程度の生活費を確保することができるようになります。他方,C男は,配偶者居住権という負担付きの建物所有権(500万円の価値)と預貯金1000万円を相続することになります。
なお,配偶者(長期)居住権が認められるのは,遺産分割協議や調停において,共同相続人間で配偶者居住権を認める合意ができた場合や,配偶者居住権を遺贈する旨の遺言があった場合など,一定の場合に限られますので,注意が必要です。

3 施行日
以上ご説明しました配偶者の居住権に関する規定は,2020年4月1日より施行される予定です。配偶者居住権は,施行日以後に開始した相続について適用されます。

2 / 3123