近年、「終活」や相続対策への関心が高まり、遺言書を作成する方が少しずつ増えています。
一方で、「手続や様式が複雑でわからない」「紛失や偽造が心配」といった声も多くあります。
こうした声をふまえ、2026年6月に改正・交付された民法では、新たに「保管証書遺言」制度(通称「デジタル遺言」制度)が導入され(改正民法967条、968条の2・3)、今後3年以内に施行される予定です。
そこで、遺言に関するポイントをお伝えします。
1 従来の遺言制度について
現在よく利用される遺言制度には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
(「秘密証書遺言」制度もありますが、比較的利用が少ないためここでは割愛します。)
■ 自筆証書遺言とは、遺言者自身で全文を手書きし、日付と氏名を書いて押印する方法です。
手軽に作成できる一方、
・ 遺言書の様式等のルールが厳しく定められており、誤りがあると無効となってしまう
・ 紛失や偽造等のおそれがある
・ 相続開始後に家庭裁判所での検認手続が必要で手間がかかる
というデメリットがあります。
■ 公正証書遺言とは、遺言者が公証役場やWeb上で公証人と対面した上で、公正証書として遺言を作成する方法です。
作成時には証人2名の立ち会いが必要となるため、偽造のおそれが少なく、より確実で安全な遺言書といえます。
しかしながら、
・ 2名の証人を用意する必要がある
・ 公正証書の作成費用がかかる
・ 証人の依頼費用がかかる場合がある(公証役場で証人を紹介してもらう場合)
というデメリットがあります。
これら従来の遺言制度のメリット・デメリットを踏まえ、令和2年から運用開始された制度が、「自筆証書遺言保管制度」です。
■ 自筆証書遺言保管制度とは、法務局において自筆証書遺言を管理・保管する制度で、
・ 遺言書の様式ルールについて法務局職員からのチェックが受けられる
・ 費用は遺言書1通につき3,900円と安価
・ 家庭裁判所での検認手続が不要
・ 紛失や偽造等のおそれがない
といったメリットがあり、従来の自筆証書遺言制度を補完するものとなっています。
しかしながら、遺言全文を自筆で書かなければならないという遺言作成の不便さは、課題として残っていました。
2 デジタル遺言が導入されると
デジタル遺言制度が施行されると、次のような流れで遺言の作成が可能となる予定です。
① 遺言全文をパソコンやスマートフォン等で作成する。
② 作成した遺言に署名または署名に代わる措置(法律上の要件を満たす電子署名)をする。
③ 法務局へ遺言書の保管を申請する(オンラインまたは郵送申請も可能)。
④ 本人の意思確認のため、遺言書保管官に対しWeb会議または対面で遺言全文を口述する。
⑤ 法務局で保管される。
このようにデジタル遺言制度では、遺言作成自体をパソコンやスマートフォンで行うことが可能となり、安全性を保ちながら、より手軽に遺言作成ができるようになることが期待されています。
3 デジタル遺言の注意点
一方で、注意しておきたい点もあります。
・ システムの仕組みを理解する必要がある
本人確認の方法、申し込み手続、誰がどのタイミングで内容を見られるのかなど、今後施行される制度の運用ルールを正しく理解しなければなりません。
・ 既にある遺言との整合性が問題になることも
デジタル遺言に限ったことではありませんが、前に別の遺言を作成していた場合、新たに作成したデジタル遺言と内容が重複・矛盾すると、前の遺言が無効となります。
このように、デジタル遺言を利用しても、正確に作成・保管をするにはいくつかのハードルが残る可能性があります。
4 法律事務所に相談するメリット
法律事務所では、
・ ご家族の状況(ご夫婦関係、再婚関係、子どもの有無、両親や兄弟との関係など)を踏まえた遺言内容の設計
・ 不動産、預貯金、事業、デジタル資産(ネット銀行、ポイント、暗号資産など)を含めた、相続財産の整理・調査と分け方のアドバイス
・ 将来、相続が開始した後のトラブルを防ぐための注意点の説明
といった、事情に応じたサポートが可能になります。
また、デジタル遺言制度の施行日は未定で、最長で約3年後の施行となるため、今すぐにこの制度を利用することはできません。
「デジタル化のニュースを見て気になっている」「そろそろ遺言を考えた方がいいのかな」という段階であっても、遺言や相続でお困りの際は、早期に専門家へご相談いただくことをお勧めします。
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