取扱業務-相続・後見相続・後見に関する弁護士相談事例をご紹介します。

預貯金の遺産分割

相談内容

私の父が先日亡くなりました。母は既に他界しているので、相続人は私と私の兄の2人です。父の遺産は、3000万円の預貯金しかありません。兄と遺産分割でもめていて、協議が整いません。兄は預貯金を2分の1ずつに分けようと言っているのですが、兄は父から生前に3000万円の贈与(特別受益)を受けていることから、兄に有利な内容で納得できないからです。遺産分割調停でも解決の目途がありません。遺産分割審判にしてもらった方が良いのでしょうか。

結果・回答

 相続人が数人いる場合、各共同相続人は、相続開始の時から被相続人の権利義務を承継しますが、相続開始とともに共同相続人の共有に属することになる相続財産については、相続分に応じた共有関係の解消をする手続を経る必要があります(民法896条、898条、899条)。そして、この共有関係を協議によらずに解消するには、遺産分割審判(同法906条、907条2項)によるべきものとされ、その手続において基準となる相続分は、特別受益等を考慮した具体的相続分となります(同法903条から904条の2)。

 ところで、最高裁の判例では、「相続財産中に可分債権があるときは、その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではない」(最判平成16年4月20日)とされ、預貯金債権は当然に分割されることから、遺産分割審判の対象とはなっていませんでした。

 しかし、最近判例が、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」(最大決平成28年12月19日)として、遺産分割の対象となると判例変更しました。

 したがって、ご相談の件では遺産分割審判にしてもらった方が良いと言えるでしょう。

※朝日まつど新聞 平成29年2月号掲載