私には小学5年生の息子がいて、サッカークラブに入っています。日頃から、ボールを他の人にぶつけたりしないよう注意しています。ところが、放課後に学校の校庭でシュートの練習をしていた時、ゴールから外れたボールがゴール裏のフェンスを越えて道路まで転がってしまい、ちょうどその時に原付バイクで走行してきた人がそのボールを避けようとして転倒し、腕を骨折してしまいました。
このような場合、監督義務者として親が責任を負うと聞きます。そして、親の監督責任は免責されないとも聞きます。怪我をされた方に治療費や慰謝料の支払いをしなければならないのでしょうか。
未成年者が自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていないときは、損害賠償責任を負いません(民法712条)。この場合、その未成年者を監督する法的義務を負う人が損害賠償をする義務を負います(同法714条1項本文)。この監督義務者の責任は、監督義務者が監督義務を怠らなかったとき、監督義務を怠らなくても損害が発生するときは、責任を負わないのですが(同項但書)、これまではほぼ無条件で監督責任が認められる傾向にありました。しかし、最近、親の責任を制限する判決が最高裁で出ました(最高裁平成27年4月9日判決)。この判決は、「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」として、親が監督責任を怠らなかったとしています。
あなたの場合でも、息子さんが危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしていたのであれば、免責が認められる可能性があります。
※朝日まつど新聞 平成27年9月号掲載
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