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刑事免責制度と協議・合意制度について(その1)

2018.08.10(金)

刑事裁判に関して、本年6月から刑事免責制度と協議・合意制度が施行されました。

この2つの制度は、いずれもこれまで有効な証拠がなく、立件が困難だった組織犯罪等について、有効な証拠を獲得しようとして作られた制度です。

ところが、この2つの制度は、その内容や対象がかなり違います。

そこで、この2つの制度について、2回に分けて説明しようと思います。

 

刑事免責制度

刑事免責制度は、他人の刑事裁判の法廷に呼び出された証人(共犯者などの関係者)について、その証言を証人自身の犯罪について不利に扱わないとすることで、証人から有効な証言がされることを期待したものです。

一般的に、他人の刑事裁判の法廷に呼び出された証人には、知っていることを話さなければならない義務、つまり証言義務があります。そのため、証人が正当な理由がないのに証言を拒絶した場合は、制裁の対象になります(刑訴法160条1項、10万円以下の過料)。(なお、宣誓した証人が虚偽の供述をした場合は、偽証罪(刑法169条)の制裁の対象になります(3月以上10年以下の懲役)。)

ですが、証人の立場でみれば、自分が証人として証言することが強制されているのに、証言した内容を自分の犯罪の刑事手続で不利益な証拠として使われてしまうならば、これは自分の犯罪について不利益な供述を強制されてしまうことになります。これでは憲法38条1項の「自己に不利益な供述を強制されない」という規定に反することになります。

そこで、刑事訴訟法は「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる」(刑訴法146条)という供述拒否権を証人に認めており、証人は自分自身の罪に関係する自分に不利益な供述を拒否できることになっています。

 

今回新設された刑事免責制度(刑訴法157条の2)は、①刑事裁判の公判において、証人が尋問に応じてした供述(及びこの供述をもとに得られた証拠)は、一部例外を除き証人に不利益な証拠とすることができない(同1号)、②その代わりに、証人の証言拒絶権を認めない(同2号)、というものです。

具体的には、検察官が刑事免責制度による証人尋問をすることを裁判所に請求し、裁判所がこの制度での証人尋問をすることを決定して、この制度での証人尋問がなされることになります。

この制度は、結局のところは、今まで共犯者などの証人が「自分の罪の裁判で不利になるから」という理由で証言を拒否できたところ、「証言を証人の不利には使わない」という条件にすることで証言拒否を許さないことにし、証人の証言を強制することで、刑事事件で共犯者などの証人からの有効な証言が出ることを期待したものです。

しかし、証人からすれば、これは単に公判の証人尋問でした供述が自分に不利に使われないというだけの利益しかなく、自分にとってそれ以上の積極的な利益がない以上、他人の事件について積極的な証言をするだけのインセンティブがないものといえます。そのため、この制度の有効性は必ずしも高くないのではないかという見解もあります。

実際、報道によれば、先日この制度が初めて使用された証人尋問が実施されましたが、証人は「覚えていない」との供述を繰り返し、検察側にとって有効な供述が出てこなかったとされています。

そこで、もっと証人に有効な証言をする強いインセンティブを与える制度として同時に施行されたのが、次回説明する「協議・合意制度」になります。