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Hello world!

相続が発生したのに放置していませんか?

2022.10.25(火)

相続手続に関して期限が定められているものには、以下のようなものがあります。

 ① 相続放棄、限定承認  

          3ヶ月 (自己のために相続の開始があったことを知ったときから)

 ② 遺留分侵害額請求

  ⅰ 1年 (相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから)

  ⅱ 10年(相続開始時から)

 ③ 相続税の申告・納付

   10か月(被相続人の死亡を知った日の翌日から)

 

   一方、遺産分割自体については、期限は定められていないので、相続から何年、何十年経ってからでも相続人間で遺産分割協議をして相続することは可能です。

 ただし、このたび、民法の一部が改正され、原則として、相続開始から10年を経過したときは、特別受益及び寄与分の規定は適用されないことになりました。

 このような改正の背景には、所有者が死亡しているのに相続手続きがなされず所有者不明となっている土地建物が増え、それが社会問題となっていることがあります。10年経つと特別受益・寄与分の主張ができなくなるとすることで、早期の遺産分割を促そうというわけです。

 この改正法の施行日は、令和5年4月1日であり、それ以前に発生した相続にも適用されます(ただし、経過措置が設けられており、少なくとも施行日から5年間の猶予期間があります)。

 このように、遺産分割において、特別受益や寄与分の主張については、期限が設けられることとなりましたので、遺産分割の際に特別受益や寄与分の主張をするつもりであれば、長期間放置しないようご注意ください。

 

 

 

成年年齢引下げで変わること,変わらないこと

2022.05.30(月)

民法の改正により,202241日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成年年齢の引下げで,日常生活にどのような変化があるのでしょうか?

 

Q1.いつから成年年齢が18歳になりますか?

A1.成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする改正民法が202241日に施行されました。民法の改正により,例えば,200451日生まれの方は,202251日の18歳の誕生日に成年となります。また,200242日生まれから200441日生まれまでの方は,202241日に成年となります。

 

Q2.成年になると,未成年者のときと何が変わるのでしょうか?

A2.成年になると,親の同意を得なくても,一人で様々な契約ができるようになります。例えば,携帯電話の契約をする,クレジットカードを作る,一人暮らしをするためにアパートを借りる,高額な商品を買うときにローンを組む,などが一人でできるようになります。また,成年になると,父母の親権に服さなくなるので,自分が住む場所や,進学先・就職先を一人で決めることができるようになります。

 

Q3.お酒やたばこも18歳になったら解禁されるのですか?

A3.お酒やたばこについては,健康面の影響から,これまでと変わらず20歳になってから解禁となります。また,競馬や競輪などのギャンブルについても,ギャンブル依存症対策の観点から,これまでと変わらず20歳になってからできます。

 

Q4.成年になって一人で契約する際に注意すべきことはありますか?

A4.未成年者が親の同意を得ずに契約をした場合は,民法上,未成年者取消権があり,契約の取消しをすることができます。しかし,成年になると,この取消権がないため,一度契約をしてしまうと,原則として契約を取り消すことができなくなってしまいます。例えば,①絶対に儲かると言われ,高額の投資をしてしまったが,結局お金が返ってこなかった,②エステの無料体験を案内され,勧誘を断り切れずにそのまま高額のエステ契約を結んでしまったが,支払ができなくなり債務が残ってしまった,などという契約トラブルが増加する可能性があります。そのため,一人で契約をする場合には,信頼できる人に相談するなどして,契約するかどうか慎重に検討する必要があるでしょう。

 

Q5.これまでに取り決めた養育費は,子どもが18歳になると支払いが終了してしまうのでしょうか?

A5. 子どもの養育費について,公正証書や調停調書などで「子が成年に達するまで養育費を支払う」などのような取決めがなされていた場合,今後,子どもが18歳になると養育費の支払いが終了してしまうのではないかとも思われます。しかし,そもそも養育費とは,未成熟子,すなわち自己の資産又は労力で生活できる能力のない者に対して支払われるものであり,子どもが18歳になったとしても経済的な自立が期待できない状況であれば,引き続き養育費の支払義務を負うと考えられます。そのため,成年年齢が18歳に引き下げられたことで,当然に養育費の支払の終了時期が満18歳となるわけではありません。したがって,民法改正前に養育費の取決めをしている場合,養育費の取決めがなされた時点では成年年齢が20歳であったことや,当事者の合理的意思解釈からすれば,これまでどおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。

また,これから養育費を取り決める場合でも,養育費は経済的な自立が期待できない子に対して支払われるものなので,高校卒業後も専門学校や大学に進学する子が多い現状からして,これまでどおり20歳や大学卒業後まで支払義務を負うものと考えられます。もっとも,これから新たに養育費の取り決めを行う場合には,「満20歳に達する日の属する月」や「満22歳に達した後最初に到来する3月まで」などと,支払期間の終期を明確に定めた方がよいでしょう。

 

成年年齢引下げに伴い,もし契約トラブルに巻き込まれてしまった場合は,一度専門家にご相談いただくことをおすすめいたします。

実収入が減少…そのとき婚姻費用や養育費は?

2022.05.11(水)

婚姻費用・養育費の額を算定するにあたっては、収入を考慮することになります。

そして、ときには、お金を支払うべき人が実際に得る収入額が、本来得られるはずの収入額よりも少ないと考えられることもあるでしょう。

以下では、2つのQ(想定質問)をもとに、収入減少による婚姻費用・養育費の支払への影響などについて考えていきたいと思います。

 

Q. 夫との間に子どもが1人います。夫は、私に婚姻費用を支払うくらいなら仕事をやめて無収入になるなどと言っていました。このまま夫が仕事を辞めてしまったら、私は夫から婚姻費用の支払を受けられなくなってしまうのでしょうか。

 

A. 婚姻費用を支払いたくないという理由で退職し、無収入になったとしても、婚姻費用を支払わなくてよいことにはならないでしょう。

裁判例でも、「就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合」には、本来の稼働能力に基づいて収入を認定することができると判示したものがあります。

* 東京高裁令和3年4月21日決定

令和3年(ラ)第228号 婚姻費用分担審判に対する抗告事件

 

Q. 元妻との間に子どもが2人います。離婚時には、私が月8万円の養育費を支払う旨の合意が成立しました。そして当初は、その内容通りに養育費を支払うことができていました。ところが、私は、数年前からうつ症状となり、医師からは、うつと診断された上で、退職して療養すべきであり、当分の間、就労は困難であるという意見を伝えられました。自主退職をして無収入になってからは、養育費を支払うことができていない状態です。子ども達には申し訳ないと思いますが、養育費の支払について、負担を軽減してもらうことなどはできないでしょうか。

 

A. 当事者間の合意(協議・調停)又は裁判によって、養育費を減額してもらうことが考えられます。そして、当事者間の協議で解決することができる場合でなければ、養育費の額を変更してもらうためには、養育費に関する合意の時には想定していないような事情の変更があったことについて主張・立証する必要があります。算定の基礎とすべき収入の大幅な減少は、そのような事情の変更に該当することがあるでしょう。

なお、養育費の分担に関しても、「就労が制限される客観的、合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合」に初めて、本来の稼働能力を発揮したとすれば得られるはずの収入を養育費算定の基礎とすることが許されるとした裁判例があります。

  * 東京高裁平成28年1月19日決定

    平成27年(ラ)第2305号 養育費減額審判に対する抗告事件

 婚姻費用・養育費について、本来支払われるべき金額をきちんと支払ってほしい、あるいは、収入に応じて現実的に支払うことができる額にしてほしいと主張するには、個別の事情で重要なものを、相手方や裁判官にきちんと伝えていく必要があるでしょう。

競業避止義務

2022.03.09(水)

<相談 事例>

  私は会社員として葬儀社に20年務めてきましたがこの度退職することにしました。知識や経験を生かして同業他社に就職しようと思っているのですが、元いた会社からは『営業区域内(関東一円)での同業者への就職・開業は許さない』『同業者に就職したり開業する場合には必ず損害賠償請求する』と言われています。在職中に特段「競業避止」の念書など差し入れたこともありません。私は営業担当として取引業者(墓石屋など)やお寺さんなどから信頼を頂いておりますし、他の仕事をやったこともありませんので同じ葬儀関係の仕事に就職あるいは開業を考えているのですが法的な問題はありますか。

<回答 内容>

  いわゆる『競業避止義務』の問題です。退職者の職業選択の自由・営業の自由と会社の利益(営業秘密など)との比較考量の問題になるでしょう。設例の事案で再就職・開業が認められないとこれまで退職者が培ってきた知識や経験が生かせなくなってしまいます。一般的には不当な方法で顧客を奪うなどでもしない限り法的問題がない(損害賠償支払義務がない)事案と言えるでしょう。

  最高裁判例(平成22年3月25日最高裁第1小法廷判決)でも金属機械部品の製造などを業とするX会社を退職後の競業避止義務に関する特約の定めなく退職した従業員において、別会社の代表取締役となってX会社と同種の事業を営み、その取引先から継続的に仕事を受注した行為は,それが上記取引先の営業担当であったことに基づく人的関係を利用して行われたものであり、上記取引先に対する売上高が別会社の売上高の8~9割を占めるようになり、X会社における上記取引先からの受注額が減少したとしても次の①②などの判示の事情の下では、社会通念上自由競争の範囲を逸脱するものではなく、X会社に対する不法行為にはあたらない。

①上記従業員がX会社の営業秘密にかかる情報を用いたり、その信用を貶めたりするなどの不当な方法で営業を行ったものではない、②上記取引先のうち3社との取引は退職から5ヶ月ほど経過したのちに始まったものであり、残りの1社についてはX会社が営業に消極的な面もあったのであって、X会社と上記取引先との自由な取引が阻害された事情はうかがわれず、上記従業員においてその退職直後にX会社の営業が弱体化した状況をことさらに利用したともいえない。

  等と判示されています。

遺留分に関する民法改正について

2022.02.22(火)

一昨年の7月に、民法の相続に関する規定に大きな改正がありました。

今回は、このうちの遺留分の制度についてご説明します。

 

遺留分の制度とは、被相続人が亡くなったとき、夫・妻や子など一部の法定相続人は、たとえ被相続人が遺言によって自分の財産をある相続人に一切相続させないとの意思を示していても、その相続人は財産を全く受け取れないことにはならず、一定割合の財産を相続財産から受け取ることができるというものです。

 

 例えば、夫が死亡し、妻と子3人(長男・二男・長女)が法定相続人となっていて、相続財産として自宅不動産(土地建物合計1200万円相当)と預貯金600万円があった場合、法定相続分としては妻が2分の1、子らがそれぞれ6分の1ずつになります。

 ここで、長年にわたり夫と長男の折り合いが悪く、そのため夫が「財産は全て、妻と二男と長女に相続させる」、つまり長男には相続させないという遺言を残していたような場合でも、子である長男には民法上の権利として、相続財産から一定割合(遺留分)を受け取ることができるのです。

 この遺留分として民法が認める割合は、配偶者、子(子が亡くなっていた場合は孫やひ孫)が相続人になる場合は相続財産の2分の1に法定相続分を掛けたもの(先ほどの例では、長男の遺留分は2分の1×6分の1=12分の1になります)、配偶者や子が居ないため被相続人の親だけが相続人になる場合は、相続財産の3分の1に法定相続分を掛けたものになります。

 

 民法改正前のこの制度は、「遺留分減殺請求権」という制度でした。

 改正前のこの制度では、遺留分権者は、たとえ遺言で相続ができないものとされていたとしても、遺留分権を行使すれば法律上当然に相続財産の一部の権利移転を受けることになっていました。

 先ほどの例で、夫名義の自宅不動産の権利は、長男の遺留分権行使によって、妻と長男を含む子ら法定相続人全員の共有状態となり、遺言により財産の相続ができないはずの長男も、遺留分に応じた12分の1の共有持分を有することになっていたのです。そのため、長男以外の相続人がこの不動産を売却しようとしても、折り合いの悪かった長男が抵抗したり反対したりして、売却手続が難航することがありました。

 今回の改正により、この制度は「遺留分侵害額請求権」という制度に変更されました。

 最大の違いは、遺留分の処理を、相続財産の一部の権利が当然に移転するのではなく、金銭のやり取りで精算することができるようになったことです。つまり、遺留分権者が遺留分を行使した場合でも、相続財産が分割されて共有になるのではなく、他の相続人たちが遺留分権者に遺留分に相当する金銭を支払えばよいことになったのです。

 先ほどの例では、自宅不動産の権利は長男には全く移転せず、長男以外の相続人は、預貯金と自宅不動産の価値相当額の12分の1である合計150万円を長男に支払えば良いことになり、それにより自宅不動産は長男以外の相続人の判断で売却等の処分ができることになりました。

 

 また、今回の改正によって、遺留分算定の前提となる相続財産の範囲についても、相続人に対する生前贈与は10年以内のものに限って算定の対象になるものとされました(改正前は、生前贈与がされた時期を問わず、全て遺留分算定の対象とされていました)。

 なお、遺留分権の行使には、遺留分権の存在(被相続人の死亡や遺留分を侵害する内容の贈与・遺贈があったこと)を知ってから1年以内にしなければならないという期間制限があります。これは改正後も変更はありません。

 

 遺留分の制度は、遺言とセットで、相続に関する極めて重要な制度です。ご家族に残す財産についてのご意見がある場合は、そのご意思を最大限に尊重するためにも、一度専門家にご相談することをおすすめいたします。

 

 

生活保護や自己破産をお考えの方

2021.03.22(月)

昨今,様々な理由から経済的に困窮し,生活保護や自己破産を考えている方がいらっしゃると思います。

今回は主に,生活保護と自己破産の関係について,Q&A方式で紹介していきます。

 

Q1 以前,多額の借金があったので自己破産をしました。その後,病気によって働けなくなり,収入が減ったため,生活保護の受給も考えています。

ただ,過去に自己破産していたら生活保護は受けられないのではないかと心配です。

A1 生活保護を受ける要件は,生活保護法という法律の4条に定められています。

その要件の中に,「自己破産をしていないこと」といった要件は定められていません。

したがって,過去に自己破産をしていても,生活保護を受けることは可能です。

 

Q2 現在借金があり,病気のため働けず収入もないので,生活保護と自己破産を考えています。

ただ,「借金がある状態で,生活保護は受けられない」と聞いたことがあります。

どうしたらいいのでしょうか。

A2 たしかに,生活保護の趣旨は最低限度の生活の保障なので,生活保護費から借金を返済していくことは望ましいといえません。

しかし,生活保護の手続きと自己破産の手続きを同時に行うことが規制されているわけではありません。したがって,両者の手続を並行して行うことは可能です。

後のQ&Aで述べるように,生活保護を受けてから自己破産を行う方が,法テラスの立替金の返還の免除がうけられるため,自己破産における費用面の負担が少なくすみます。

 

Q3 生活保護の手続と自己破産の手続きを並行して行えることはわかりました。

ただ,自己破産をするためにも費用がかかりますよね。生活保護が認められても,その費用を準備することが難しいのですが,どうしたらいいのでしょうか。

A3 法テラスの援助制度(費用の立替払い)を利用して自己破産をすることが考えられます。

立替払いなので,本来,立替金を返還していかなければなりません。

しかし,生活保護を受けている場合,援助終結まで立替費用の返済を猶予されます。

その上で,自己破産の手続終了後も生活保護を受けているのであれば,申請を行うことにより,通常,立替払い金の返還が免除されます。

また,生活保護を受けていない場合,自己破産のために裁判所に納付する予納金は立替金の対象にはなりませんが,生活保護を受けている場合は,予納金も立替金の対象となります。

以上をまとめると,次の通りです。

 

・過去,自己破産した方でも,生活保護を受けることはできる。

・生活保護と自己破産の手続きは,並行して行うことができる。

・生活保護の申請に困ったら弁護士に相談できる。

・自己破産の手続費用の捻出が難しい場合,法テラスが利用できる。

・生活保護を受けている場合,法テラスの立替金返還は免除となる。

 

ユーカリ総合法律事務所では,経験豊富な弁護士が生活保護・自己破産についてご相談を承っております。

とりあえず弁護士に相談してみて,方針が決まってから法テラスを利用する,といった方法もありますので,お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

支払われなくなった養育費・・・あきらめていませんか?

2020.10.20(火)

今年4月1日に改正民事執行法が施行されたことにより,養育費の回収のための手段が増えました。

以下では様々なQ(想定質問)をもとに,各手段をご紹介します。ぜひご自身に当てはまるQを探してみて下さい。

 

Q1.1年前に離婚した元夫との間に子供がいます。離婚時に養育費については取り決めをして公正証書にしましたが,元夫から全く支払いがありません。相手に支払わせる方法はあるでしょうか?

A1.公正証書を作っているとのことなので,これをもって,元夫の財産に強制執行していくことが考えられます。

前記公正証書をもって強制執行をするためには,公正証書にあらかじめ,例えば,「養育費の支払いが遅滞した場合には元夫は強制執行に服する」といった内容の強制執行認諾文言を付しておく必要があります。

また,強制執行に当たっては,元夫の財産の情報が必要となりますが,これを得るための手続として,財産開示手続を申立てることが考えられます。今回の改正により強制執行認諾文言付の公正証書があれば,財産開示手続を申し立てられるようになりました。

財産開示手続は,裁判所に申し立てることで,債務者(本Qにいう元夫)を財産開示期日に裁判所に出頭させ,債務者に自己の財産状況を陳述させることができる手続です。

元夫が財産開示手続で自分の財産について陳述すれば,それによって判明した財産に強制執行していくことで,養育費の回収が可能です。

 

Q2.養育費を支払ってこない元夫が不動産を相続したらしいという話を聞きましたが,相続した不動産から養育費を支払ってもらうことはできないでしょうか?

A2.元夫が相続した当該不動産に対し強制執行をしていくことが考えられます。強制執行には,不動産の地番等の情報が必要であり,当該情報を管理するのは不動産の所在地の登記所ですが,現時点で,登記所から元夫の所有不動産の情報を一覧で取得する方法はありません。

ただ,今後,当該情報取得のための手段として,不動産に関する第三者からの情報取得手続の申立ができるようになります。この手続は今回の改正により新設された制度です。現時点では,まだ申立できないのですが,2021516日までの間にできるようになる予定(開始日未定)です。

これが認められるためには,A1でご説明した財産開示手続を先に行い,これでも養育費の回収のための情報が取得できなかったことが必要となりますが,認められれば,所有者(本Qでいう元夫)の名前で整理された不動産の情報を取得することができます。

 

Q3. 養育費を支払ってこない元夫が,今でも働いているらしいとの情報は入ってきていますが,就業先がわかりません。元夫の給料から,養育費を回収することはできるでしょうか?

A3.元夫の給与債権に対し強制執行をしていくことで,将来分も含めて,継続的に,元夫の給与から養育費を回収することができるようになります。そのためには元夫の勤務先情報が必要となります。

そして,勤務先を調べる方法として,給与債権に関する第三者からの情報取得手続を申し立てることが考えられます。この手続も,今回の改正により新設された手続です。不動産に関する第三者からの情報取得手続(A2)と同様,財産開示手続(A1をご参照ください。)を経る必要があります。

もっとも,給与債権の差し押さえについては,差押禁止の範囲(給与の2分の1,又はこれが33万円を超える場合には給与のうち33万円)があることに注意が必要です。

 

Q4. 元夫の預金口座について,取引銀行までは分かりますが支店名や口座番号までは分かりません。預金から養育費を支払ってもらうことはできないでしょうか?

A4. 預金に強制執行していくことで,養育費を回収することができますが,強制執行に当たり支店名や口座番号等の情報が必要となります。そして,これを取得するため,預金債権等に関する第三者からの情報取得手続きを申し立てることが考えられます。

この手続も,今回の改正により新設された手続であり,不動産に関する第三者からの情報取得手続(A2)と同様,財産開示手続(A1をご参照ください。)を経る必要があります。

これが認められれば,預貯金債権の存否,取扱店舗,預貯金の種別,口座番号及び額(本Qでいう元夫名義の預金口座情報)を取得することができます。これにより判明したBさん名義の預金口座に強制執行をしていくことで,養育費を回収することができます。

預金債権への強制執行は給与債権に対するもの(A3)と異なり,一回きりの回収になりますが,預金債権には,差押禁止の範囲が存在しませんから,未払い分も含めた大きな額の回収が期待できます。

 

まとめ

今回の改正により,養育費取立のための情報を取得する方法が増えました。養育費の回収を今まであきらめていた方も,今回の改正により回収が可能となるかもしれません。お心当たりがございましたら,ぜひ一度,当事務所にご相談ください。

 

 

 

法定利率

2020.07.08(水)

新民法が施行されて早くも3カ月が過ぎました。今回は、民法改正の中でも大事だと思われる法定利率についてご紹介したいと思います。

民法改正により法定利率の見直しがされましたが、法定利率が問題になるのは、職場内の事故など安全配慮義務が問題になる場面や交通事故等による損害賠償を請求する場面が多いです。このような場面でお困りの方にご参考になれば幸いです。

 

①法定利率の変更&利率の変動制を導入

まず、法定利率が引き下がり、新たに変動制が導入されました。

従来では、民事法定利率は5%、商事法定利率は6%でしたが、今回の民法改正により民事法定利率は3%に引き下げられました(新民法4042項)。そして、商事法定利率は廃止され、商行為によって生じた債務についても民事法定利率を適用することになりました。

さらに、この利率は、市中金利の変動に合わせて3年ごとに見直され、変動する場合は1%刻みの数値で増減します(新民法4043ないし5項)。なお、1つの債権については1つの法定利率が適用されるので、ある債権について3年ごとに法定利率が変動するといったことはありません。

 

②中間利息控除(新民法417条の2

 法定利率に関するもので、もう一つ重要なものが、中間利息控除に関する規定です。

中間利息控除とは、不法行為等の損害賠償において逸失利益(本来得られるはずだったにもかかわらず不法行為等によって得られなくなった利益)から運用益を排除することです。逸失利益を含む損害賠償は原則として一括で支払われます。そのため、たとえば、今すぐ2000万円を受け取ることができ、年5%ずつ運用できた場合を想定すると、1年後には2100万円、2年後には2205万円…と増加していき、被害者は本来の損害を上回る賠償額を受け取ることになり、当事者間で不公平が生じてしまいます。この不公平さを是正するために、実務では中間利息を控除するという方法をとっています。

この中間利息について、民法改正前までは、民法に特別の規定はなく、判例の蓄積によって運用されていましたが、今回の民法改正により、損害賠償請求権が生じた時点における法定利率により利息を控除する旨規定されました(新民法417条の2、同7221項)。

契約上特段の定めがない場合における債務不履行責任に関しては、遅滞の責任を負った最初の時点が基準となるため(新民法4191項)、中間利息控除もこの時点の法定利率となります。

他方、交通事故などの不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為時(交通事故発生時)に発生すると考えられるため、中間利息控除についても、交通事故発生時の法定利率になると考えられています。

 したがって、中間利息控除の基準時が2020331日までの場合は利率が5%、202041日から2023331日までの場合は利率が3%、それ以降はその後の変動率によることになります。

法務局における自筆証書遺言保管制度が本年7月から始まります

2020.06.11(木)

これまで自宅で保管されることの多かった自筆証書遺言について、遺言者の申請があれば法務局で保管するという制度が新設されました(令和2年7月10日施行)。

この制度を利用することにより、自筆証書遺言の紛失や、遺言者以外の者による改ざん・破棄のおそれもなく、遺言書が安全に保管されることになります。

保管の申請は、遺言者の住所地、本籍地、または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局(遺言書保管所)にすることができ、申請の際は遺言者本人が出頭する必要があります。手数料は1件につき3,900円です。

遺言者は、預けた自筆証書遺言の内容を書き換えたいときは、法務局に対し、保管の申請を撤回して、遺言書を返してもらうことができます。この場合は、書き換えた遺言について、あらためて手数料を支払い保管申請を行うことになります。

遺言者が亡くなった後、相続人は、法務局において、保管されている遺言書があるか否かを確認することができ、保管されている遺言書があれば閲覧・交付を請求することができます。遺言者から遺贈を受けた者(受遺者)も、自分を受遺者とする遺言が保管されているかについて確認し、そのような遺言があれば閲覧・交付請求を行うことができます。そのほか、遺言執行者に指定されている者も同様です。このような遺言書の保管確認や閲覧、交付請求は、当該遺言書を保管している法務局に限らず、全国のどの法務局でも可能です。ですので、遺言者は、遺言書が法務局で保管されているということを相続人、受遺者あるいは遺言執行者にわかるようにしておけばよいのです。

法務局で保管されていない自筆証書遺言については、相続発生後、相続人等が家庭裁判所に遺言を提出して「検認」の申立を行う必要がありますが、法務局で保管されている自筆証書遺言については検認手続は不要となります。

なお、法務局は、申請された遺言が自筆証書遺言としての法律上の要件を満たしているかを外形的に確認したうえで保管しますが、遺言の内容には一切関与しませんし、遺言者に遺言能力があるか否かをチェックするわけでもありません。ですので、保管された遺言の有効、無効をめぐる争いを完全に防止することはできません。ただ、皆さんが思いを込めて作成した遺言が安全に保管されるというのは大きなメリットですし、手数料の面でも利用しやすいと思いますので、自筆証書遺言を作成される方は併せて保管制度の利用を検討してみてもいいのではないでしょうか。

 

建物賃貸借契約の敷金の扱いについて

2020.01.24(金)

令和初の新年を迎えてから、早くも一月が経とうとしています。

 本年も当事務所をよろしくお願いします。

 さて、2020年といえばいよいよ東京オリンピックの年ですが、法律の業界では、民法の大幅な改正がある年でもあります。

 今回の改正は120年ぶりの大改正とも言われており、契約法の基本原則や基本的な時効期間など、民法の根本に関する規定から大きな変更があります。

 今回は、これらの中から身近な話題として、建物賃貸借契約の敷金の扱いに関する事項を取り上げてご紹介したいと思います。

 アパートや賃貸マンションなどの賃貸借契約をするとき、借主が敷金を差し入れることが通常ですが、いままでの民法では、この敷金についての明文規定がありませんでした。そのため、入居に際して借主が支払うお金の何が敷金扱いになるのか、部屋を退去する場合に、敷金がいつ返ってくるのか、いくら返ってくるのかについて、民法上の規定がなく、これまでに裁判になったケースの裁判所の判断例などの積み重ねによって解決が図られていました。

 ですが、現実にトラブルになりやすい事柄についてはやはり民法上の規定があった方がいいという考えもあり、今回の改正では、①何が敷金となるのかの定義の定め、②敷金の返還時期の定め、また③敷金から差し引かれることが多い原状回復の範囲に関する定めが、新たに追加されることになりました。

①敷金の定義について

 改正前は、何が敷金になるのかの明文の定めはなく、実際には「権利金」や「保証金」といった名称を使われることもあり、その名称の違いによるトラブルも発生していました。

 そこで、改正法では、どのような名目・名称であっても、借主の貸主に対する金銭債務を担保する目的で、借主が貸主に交付する金銭のことを「敷金」と呼ぶものと明記されました(改正法622条の2)。

 この借主の貸主に対する金銭債務とは、未払いの賃料のほか、退去時の原状回復にかかる費用も一部も含まれることになります。

②敷金の返還時期について

 退去に際し、貸主が借主に対し、いつ敷金を返還しなければならないかについても改正前には明文の定めがなく、最高裁判所の判例で、借主が建物を退去し、明渡が完了したときとされていました。

 改正法では、敷金の返還時期について、最高裁の判例とほぼ同様に、賃貸借が終了し、貸主が賃貸物の返還を受けたときとする明文規定が置かれました。

③原状回復の範囲について

 また、退去に際して借主が負う原状回復義務(実際にはクリーニング代・修繕費として敷金から差し引かれるものになります)について、これまでは明文の定めがなく、トラブルが多く発生していました。

 そこで、改正法では原状回復の範囲について、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明文で規定され、このような損耗や経年変化の回復費用は敷金から差し引かれないことが明文で規定されました。

 もっとも、さらに具体的に「何が通常の使用収益による損耗・経年変化にあたるのか」については、現状で国土交通省が作成したガイドラインなどをもとに判断されることになります。具体的には、家具の設置による床やカーペットの凹み等の設置跡や、テレビ・冷蔵庫等の後の壁の黒ずみなどが、通常の使用収益による損耗・経年変化にあたりますが、タバコのヤニ汚れやペットによる柱の傷などは、これにあたらないとされています。

 敷金改正の施行日は4月1日。施行日以降の賃貸借契約について、改正後の規定が適用されることになります。

 

相続法改正 ~遺留分制度に関する改正~

2019.09.25(水)

 平成30年7月に民法の相続に関する規定を改正する法律が成立しました。改正された法律は大部分が令和元年7月1日から施行されました。
 今回は、改正された法律のうち、遺留分制度の改正の概要をご紹介します。
 遺留分とは、被相続人の財産が特定の者に財産が贈与等された場合でも、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人(遺留分権利者)に、一定の財産の取戻しを認める制度です。
 改正前の民法では、遺留分権利者が被相続人から贈与等を受けた者に対し、遺留分減殺請求をすると、遺留分を侵害している贈与等はその侵害額の限度で効力を失い、減殺された財産はその限度で遺留分権利者のものとなります。現物返還が原則で価額弁償は例外となっていました。
 例えば、被相続人の相続人が長男、長女の2人、被相続人が長女に500万円を生前贈与し、土地建物(評価額が土地1500万円、建物500万円)を長男に相続させる旨の遺言をしていた場合(その他に遺産はないものとします)、以下のように処理されるのが原則でした。
長女の遺留分が侵害された額
(500万円+1500万円+500万円)× 1/2 × 1/2 - 500万円=125万円
生前贈与    土地    建物   遺留分率  法定相続分  生前贈与
 この125万円の遺留分侵害額を不動産が複数ある場合には価額の割合に応じて割り付けられるため、
建物に31万2500円(=125万円×500万円/(500万円+1500万円))
土地に93万7500円(=125万円×1500万円/(500万円+1500万円))
 この分が共有持分として登記されることになります。
 そうすると、建物について、「長男の共有持分500万分の468万7500、長女の持分500万分の31万2500」、土地について、「長男の持分1500万分の1400万62510、長女の持分1500万分の93万7500」という持分割合で登記されることになります。そして、この共有状態を解消するために共有物分割訴訟を提起して争うことになります。しかし、遺留分減殺請求調停・訴訟をした後、共有物分割訴訟をしなければならないこととなり、解決までに非常に時間がかかってしまいます。また、不動産の権利関係が複雑になってしまいます。
 改正後の民法では、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することができることとなりました。
 上記の例では、長女は、長男に対し、125万円の支払いを請求することができるのみとなります。
 遺留分の算定方法についても、改正前の民法では、遺留分の計算に算入される贈与の範囲について、相続人以外の者に対する贈与は相続開始の1年以内、相続人に対する贈与で特別受益に当たるものはすべてとされていました。改正後の民法では、相続人に対する特別受益に当たる贈与については、相続開始の10年以内にされたものに限って算入することとなり、算入される範囲が限定されました。
以上

不貞行為と離婚の慰謝料

2019.04.17(水)

1 離婚慰謝料に関する最新判例
 「離婚慰謝料 特段の事情ない限り、配偶者の不倫相手に請求できず 最高裁が初判断」(毎日新聞2019年2月19日)などのニュースをご覧になり,不倫されても慰謝料が請求できないの!?と思われる方もいるかも知れません。
 〇最高裁平成31年2月19日第三小法廷判決
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/422/088422_hanrei.pdf
 今回,この判決を踏まえて,不貞行為に対する慰謝料請求について解説します。

2 不貞行為と不法行為責任
(1)法律上の根拠
(不法行為による損害賠償請求)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 実務上,不貞行為は不法行為として扱われるため,この条文から不倫相手に慰謝料請求ができることとなります。
 少し分析的にいいますと,不貞行為により「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法律上保護される利益を侵害した者」は,損害を賠償する責任を負います。
(*諸説ありますが,内田貴 『民法Ⅳ補訂版』 東京大学出版会 26頁 によります)
 ここで注意すべき点を指摘しておきます。不貞行為による不法行為は「婚姻共同生活の平和」を侵害した場合に限られるので,既に冷え切った婚姻関係の下(例えば,性格の不一致などで先に別居していたときなど)では,「婚姻共同生活の平和」が既にないので,不貞行為が不法行為となりません。
 また,不法行為者は損害を賠償する責任を負うので,損害が発生しないと賠償されません。そして,損害の範囲は,不貞行為が原因で受けた損害のみとなります。(「不法行為と損害の因果関係」が必要と言い換えられます。)そこで,次に損害について考えていきます。

(2)不貞行為による損害
 不貞行為により婚姻相手が取られてしまったことが損害とお考えの方もいるでしょう。確かに,お気持ちは察しますが,婚姻相手は物ではないので,法的にこのような損害は認められません。
 そこで,不貞行為による損害は,次の2つに大別できます。
   ①婚姻共同生活の平和の破壊による直接的な精神的苦痛
   ②婚姻共同生活の平和の破壊の結果の婚姻関係破綻(=離婚など)による精神的苦痛
 一般に,①の損害に対する請求を不貞慰謝料,②の損害に対する請求を離婚慰謝料と区別されることが多いようです。
 ②は①の次に続くものなので,これのように分ける必要がないようにも思えます。
しかし,この区別は「時効」によって全く異なる結果を迎えます。

(3)不法行為の時効
 時効(消滅時効)は,権利を行使せずに一定期間経過すると権利が消滅する制度のことです。不法行為による損害賠償請求権は,損害と加害者を知った時から,請求せずに3年経過すると権利が消滅します(民法第724条)。
 具体的には,①の損害については,損害の発生日が不貞行為を知った日なので,不貞行為を知って不倫相手を突き止めた後3年以内に不倫相手に慰謝料を請求しなければ,請求権が消滅します。
 一方,②の損害について,損害の発生日は離婚した日なので,不倫相手を突き止めた日と離婚した日のいずれか遅い方の日から3年以内に不倫相手に慰謝料請求しなければ,請求権が消滅します。

3 最新判例の分析
(1)事案の概要
 結婚15年後,妻が自らの勤務先の男性と不貞行為に及ぶようになり,その約1年後に夫が妻の不貞関係を知った。その時点で,妻と不倫相手は不貞関係を解消した。そして,不貞関係解消の5年後に夫婦は離婚し,夫が不倫相手に対し離婚に伴う慰謝料請求した,という事案でした。
 少し補足しますと,不貞関係の解消は請求から5年以上も前のことなので,不倫相手に対する①の損害に対する慰謝料,つまり不貞慰謝料は請求できない状況でした。そこで,②の損害に対する慰謝料,つまり離婚慰謝料を請求したという経緯です。

(2)最高裁の判断
 最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄」と理由を付して,「当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」。不倫相手に対して,このような「特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」と結論付けています。

(3)判例の分析
 つまり,最高裁は,離婚は夫婦間で決められ,不倫相手が離婚を余儀なくさせるような振る舞いがなければ,離婚させることを意図していたといえず,特段の事情がなくなり,不倫相手は離婚の結果に対する責任を負わないとしています。
 このような最高裁の論理構造から推察すると,②の「婚姻共同生活の平和の破壊」が当然「離婚」の結果をもたらさないと考えているといえるでしょう。
 つまり,訴える者(原告)は,不倫相手による不貞行為と夫婦の離婚との因果関係の証明が別途必須ということでしょう。

(4)判例の影響
 このように本判例は,不倫相手に対する離婚慰謝料の請求について,因果関係の証明というハードルを明確にしています。一方,不貞慰謝料について何も触れていません。
 つまり,不倫相手に対する不貞慰謝料請求権が時効消滅していなければ,不倫相手に対して不貞慰謝料の請求は当然可能です。
 よって,不倫相手に対する慰謝料の請求は,不貞行為が解消されて3年以内に請求するように注意すべきであり,この場合でも不貞行為が請求の3年以内であることの証拠が必要でしょう。
 また,不貞行為解消の3年経過後の請求であれば,不倫相手が離婚を意図していたといえるような証拠を集めるように努力する必要がありそうです。