隣地の庭木の手入れが全くされていないため、木の枝が何本も境界を越えてこちらの敷地に入っており、我が家の窓に当たりそうになっています。隣地は、数年前まで高齢の方が1人で住んでいたのですが、現在は誰も住んでおらず、枝を切ってもらうようお願いすることもできません。どうしたらよいでしょうか。
まずは、隣地の現在の所有者が誰なのか、法務局で登記事項証明書を取得して確認してみましょう。登記事項証明書の所有者欄に現在の所有者とその住所が記載されていますので、その人宛に、越境している枝を切ってもらいたいと請求する通知書を出しましょう。
問題は、通知書を出したのに、いつまでたっても枝を切ってくれない場合、あるいは、登記事項証明書に記載されている所有者が数年前に住んでいた人と変わっておらず、その人の生死や現在の居所などがわからない場合です。
これについて、以前の民法では、越境している隣の木の根は勝手に切ってもよいけれども、越境している木の枝は勝手に切ることはできず、あくまでその所有者に対し「切ってください」と請求するしかなく、相手が応じなければ裁判をするしかありませんでした。
しかし、令和3年の民法改正により、越境している木の枝について、以下の場合には例外的に、越境されている人が切ってもよいということになりました。
① 所有者に対し枝を切除するよう催告したにもかかわらず、所有者が相当期間内に切除しないとき
② 木の所有者が誰かわからないとき、または、その所在を知ることができないとき
③ 急迫の事情があるとき
ですので、相手の所在がわかれば、枝の切除を求める通知書を出し(内容証明郵便で出すのがよいです)、2週間程度待って何の対応もなければ越境部分について代わりに切っても大丈夫です。
また、登記事項証明書等を調べても隣地の現在の所有者がわからない場合は、同様に、枝を切っても大丈夫です。
なお、その場合の切除費用が誰の負担になるのかについては民法上の定めはありません。ただ、本来は木の所有者が費用を負担して切除しなければならないものですし、所有者が木を適切に管理せず、枝を越境させていることにより発生した費用ですので、不法行為による損害賠償として木の所有者に対し切除費用の請求ができると考えられます。
ただ、そうはいっても、所有者不明の場合には、かかった費用の請求は現実には難しいので、代わりに切除する場合はその費用が自己負担になることも覚悟する必要があるでしょう。
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