隣人の甚だしい不注意によって所有する家屋が全焼してしまいました。家屋のなかには家財もあり、一緒に焼けてしまいましたが、具体的にどの家財が焼けてしまったのか、焼けた家財が火災当時どのくらいの価値があるものだったのかといったことが分からず、損害額を特定できません。損害額がわからない場合には、これら家財に関する損害について、加害者への賠償請求を諦めなければならないのですか?
他人の違法行為によって損害を受けた場合、民法上、被害者は加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。
もっとも、訴訟上、上記損害賠償の請求が認められるためには、裁判所から「損害が発生したこと」に加えて、「損害の額」を認定してもらうことが必要になり、それを証明する責任は、請求をする側の当事者(=被害者)にあります。
「損害が発生した」ことが立証されても、具体的な「損害の額」が立証できない場合には、損害賠償の請求が認められないのが原則なのです。
しかし、損害の性質上、損害額の立証をすることが極めて困難である場合に、この原則を貫くと、そのような損害賠償請求は常に認められないことになってしまい、当事者間の公平や社会通念に合致しません。
そこで、民事訴訟法248条は、上記のような場合に、「損害が発生した」と認められることを条件として、当事者による具体的な「損害の額」の立証がされなくても、裁判所が相当と認める額を損害額として認定することを認めました。
問題は、どのような場合が同条の適用が受けられる「損害の性質上、損害の額を立証することが極めて困難であるとき」に当たるかということですが、おおむね以下がこれに該当すると言われています。
・居住する家屋が消失した場合の家財に関する損害の賠償を求める場合
・幼児が不法行為等によって死亡した場合の逸失利益(=当該不法行為がなければ得られたはずの収入)の賠償を求める場合
ただ、裁判例のなかには上記場合以外の事案でも民事訴訟法248条の適用を認めたものがあります(採掘権侵害による損害の賠償を求めた事案や、交通事故により生じた休車損害(=当該不法行為がなければ当該車両によって稼げたはずの収入)の賠償を求めた事案など。)。
そのため、ある事案について同条の適用がみとめられるかは、具体的事案の内容によるものといえます。
したがって、損害額の立証が困難である場合にも、それだけで賠償請求を諦めるのは早計でしょう。自分の事件と同じような事案で同条の適用を認めた前例がないか、検討する必要があります。
また、そもそも本当に損害額の立証が出来ないのかどうか、事件に関する資料をもとに検討する必要もあるでしょう。
上記の検討のため、このような事件でお困りの場合には、弁護士までご相談ください。
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