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時効期間満了後の支払い請求

相談内容

私は、以前、貸金業者からの借金がありました。月々きちんと返済をしていたのですが、会社の業績が悪化して給料が下がったことによって生活が苦しくなり、借金の支払いをすることができなくなりました。その後、転職をして、新しい職場の近くに引っ越しをしました。引っ越しをした頃からずっと借金の返済はしていません。

 ところが、最近になって、貸金業者から突然、借金の返済を催促する書面が自宅に届きました。最後に返済をしたのは、6年前だと思うのですが、貸金業者からの書面には、元金のほか、その頃からの遅延損害金の支払いも求められ、とても支払える金額ではありません。返さなかった私が悪いとは思うのですが、全額支払わないといけないでしょうか。

結果・回答

債権の消滅時効の時効期間は、個人同士の金銭の貸し借りであれば10年間(民法167条1項)ですが、貸金業者からの債務の消滅時効期間は、5年間です(会社法5条、商法522条1項)。消滅時効の期間が満了すると、債権は消滅します。

 したがって、あなたの場合、消滅時効期間が満了していると思われますので、消滅時効の援用(民法145条)をすることによって貸金業者の債権の消滅を主張することができると考えられます。

 もっとも、貸金業者があなたに対して確定判決を持っている場合、消滅時効の時効期間は10年間になります(民法174条の2第1項)。貸金業者に対して時効援用の主張をし、貸金業者からの反応を待つとよいかもしれません。

 時効の援用をする前に、支払いを約束する文書を書いたり、一部でも借金の支払いをしないようにしてください。それをしてしまうと、判例上、時効援用の主張は信義則上認められないとされていますので、残債務の全額を支払う義務が生じてしまいます。

※朝日まつど新聞 平成28年9月号掲載