令和5年11月14日当事務所代表弁護士の小見山大が多年にわたる民事調停委員としての功績をたたえられ千葉地方裁判所所長から表彰状を頂きました。
夫婦の一方が不貞行為を行った場合、それが不法行為(民法709条)にあたるとして、有責配偶者(不貞行為をした配偶者)や不貞行為の相手方に対し、損害賠償としての慰謝料を請求することができます。
ここにいう不貞行為とは、典型的には性行為・肉体関係を指しますが、必ずしも肉体関係がある場合に限られるわけではありません。裁判例上、どのようなケースで不貞行為が認められるのか、行為類型ごとにみていきます。
ここからは、有責配偶者をA、その相手方をBとして説明します。
1 性交類似行為
東京地裁平成23年4月26日判決(平成22年(ワ)第2485号)は、性交を伴う不貞関係にあったとは認め難いものの、AとBがホテルに行き、一緒に風呂に入ったり、AにおいてBの体に触れるなどの性的行為を行っていたことを理由に、法的に保護されるべき婚姻生活の平穏を害する不法行為をしたものとして、慰謝料100万円が認められました。
2 離婚要求
東京地裁平成20年12月5日判決(平成20年(ワ)第2040号)は、BとAとの間に、性的肉体的交渉自体は認められないものの、婚姻を約束して交際し、Aに対し、妻との別居及び離婚を要求し、キスをしたことが認められるとして、これらが不法行為を構成するとし、未だ離婚が成立していないこと、Bに積極性があることを理由に、慰謝料250万円を認めました。
このように、性交、肉体関係以外でも、性交に類似する行為や、継続的な交際、配偶者との離婚要求といった行為は、不貞行為となる可能性があります。
3 愛情表現メールの送信行為
東京地裁平成24年11月28日判決(平成23年(ワ)第19363号)は、BがAに対し、「逢いたい」「大好きだよ」等の愛情表現を含む内容のメールを送信した行為について、AとBが身体的接触を持っているような印象を与えるものであり、これを配偶者が読んだ場合に婚姻生活の平穏を害するものであるとして、不法行為責任を負うものとし、慰謝料として30万円を認めました。
4 結婚を希望して交際を継続
東京地裁平成17年11月15日判決(平成16年(ワ)第26722号)は、AとBは肉体関係を結んだとまでは認められないものの、互いに結婚することを希望してAと交際したうえ、周囲の説得を排して、Aとともに、原告に対し、Aと結婚させてほしい旨懇願し続け、その結果、原告とAとは別居し、まもなく原告とAが離婚するに至ったものと認められ、Bのこのような行為は、婚姻生活を破壊したものとして違法の評価を免れず、不法行為を構成するとして、慰謝料70万円を認めました。
5 密会行為
東京地裁平成21年7月16日判決(平成20年(ワ)第24025号)は、ホステスのBが、Aに妻がいることを知りつつ、勤務時間外に会って食事や映画鑑賞、喫茶を共にしていたという事例で、婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性がないとして、不法行為の成立を否定しました。
上記の通り、性交・肉体関係でなくても、不貞行為が認められる場合があります。
どのような場合に認められるかについて、上述の東京地裁平成17年11月15日は、次のように示しています。
「婚姻関係にある配偶者と第三者との関わり合いが不法行為となるか否かは、一方配偶者の他方配偶者に対する守操請求権の保護というよりも、婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益を保護するという見地から検討されるべきであり、第三者が配偶者の相手配偶者との婚姻共同生活を破壊したと評価されれば違法たり得るのであって、第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえないと解するのが相当である。」
配偶者の浮気・不倫が疑われる等でお困りの場合は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
2020年4月15日付ブログでもお知らせしたとおり、新型コロナウィルス感染対策のため、電話相談にて対応させていただいております。詳しくは同日ブログをご参照ください。
https://yukari-lo.com/cms/news/20200415/1026/
対象地域として、「千葉県、東京都、茨城県にお住まいの方」としておりましたが、7月より対象地域を広げ、「千葉県、東京都、埼玉県、茨城県にお住まいの方」といたします。
新型コロナウィルス感染対策のため、当面の間、事務所での対面相談の受付を休止しています。緊急対応として、現在、千葉県、東京都、茨城県にお住まいの方に限り、期間限定で電話相談にて対応させていただいております。
相談は予約制になりますので、電話相談ご希望の方は、事前に、お電話いただくか、ホームページのご相談フォームからお申込みください。
初回のみ無料相談となりますが、電話相談の性質上、お時間は15分から30分に限らせていただきます。
電話相談につきましては、感染症対策下の緊急対応になりますので、ご相談いただいた時点での当事務所としての暫定的回答となりますのでご了承ください。
また、相談後のご契約につきましては、原則として事務所にご来所いただくことが前提となります。新型コロナウイルス感染状況に応じ、後日面談の上でのご契約となりますのでご了承いただきますようお願い致します。
新型コロナウィルス感染予防及び拡大防止のため、弁護士およびスタッフがマスク着用で対応しております。予防の一環ですので、ご了承頂きますようお願い致します。
・マスクをお持ちの方は着用いただき、感染予防対策へのご協力お願い致します。
・相談および打ち合わせの日、発熱のある方、体調不良のお客様は事前にお電話で申告いただき、相談日を再調整していただきますようお願い致します。新型コロナウィルスの初期症状等をお持ちの方の相談はやむなくお断りさせていただく場合がございます。
・当事務所ではご来所時に、手指の除菌にご協力いただくようお願い致しております。
少し間が開いてしまいましたが、前回の刑事免責制度に引き続いて、昨年6月より運用が始まった協議・合意制度についてご説明します。
この協議・合意制度は、一般に「日本版司法取引」と呼ばれていて、最近は大企業の経済事件について、この制度が実際に利用されたという報道もあります。
この制度を一言で言えば、組織犯罪・企業犯罪などの特定の種類の犯罪について、被疑者・被告人(以下「被疑者等」といいます)が、共犯者などの他人の犯罪に関する供述や証言、証拠提供などの捜査協力をする見返りに、自分の犯罪については不起訴や略式起訴などの軽い処分にすることを、捜査機関との間で約束するものです。
具体的に説明していきます。
1 対象となる犯罪が限定されている
司法取引制度は、外部からその実態がわかりにくい組織犯罪や企業犯罪について、捜査機関が共犯者や内部者等から情報を取得し、事件の全容を把握して、処罰すべき「本命」の犯人を起訴し有罪判決を得る効果を期待したものとされています。
そのため、司法取引によって処分が軽減等される対象となる犯罪も、組織犯罪や企業犯罪として多く見られるものに限定されています。
具体的な犯罪名は結構多く定められていますが、おおむね、
・偽造罪、詐欺罪・組織的詐欺罪、恐喝罪、爆発物犯罪、銃器犯罪、薬物犯罪など、組織犯罪として多くみられるもの、
・贈収賄罪、業務上横領罪や会社法上の特別背任罪、脱税等の税務犯罪、カルテルや談合等の独占禁止法違反、有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー取引等の金融商品取引法違反などの経済犯罪など、企業犯罪として多くみられるものが、対象となる犯罪として定められています。
他方、殺人罪や強姦罪などは、司法取引による処分の軽減の対象とはなりません。
2 他人の刑事事件についての捜査等に協力をすることを約束すること
諸外国の司法取引制度には、①自分の犯罪を自白して捜査に協力する見返りに、自分に対する軽い処分を求めるもの(自己負罪型)と、②共犯者などの他人の犯罪の捜査などに協力する見返りに、自分に対する軽い処分を求めるもの(捜査等協力型)の2種類があります。
今回、我が国で採用されたのは、このうち②の捜査等協力型になります。
被疑者等がする具体的な協力の内容としては、
①共犯者などの他人の犯罪の捜査について、捜査機関、つまり検察官や警察官(刑事)等の取り調べに対して真実の供述をすること
②他人の犯罪の刑事裁判において、証人として出廷し、真実の供述をすること
③捜査機関による他人の犯罪の捜査について、証拠を提出するなどの協力をすること
の3つが定められています。
3 見返りとして、自分の刑事処分を軽くすることを約束すること
被疑者等は、他人の犯罪捜査に協力する見返りとして、自分の犯罪については軽い処分にすることを約束することができます。
具体的な処分軽減としては、被疑者等の処分を決める検察官において、
①不起訴にしたり、起訴済みの場合は起訴を取り下げる
②刑罰の軽い犯罪として起訴したり、起訴済みの場合も刑罰の軽い犯罪に変更する
③正式裁判ではなく、略式裁判(罰金刑になる)や、即決裁判(執行猶予になる)として起訴する
④正式裁判になったとしても、検察官の求刑の時に通常より軽い刑を求める意見を言う
などがあります。
ただし、あくまで刑事処分自体の軽減ですので、例えば被疑者等を釈放させるといったような約束をすることはできません。
4 弁護人の関与・書面の作成
被疑者等が、捜査機関との間でこれらの取引や約束をするとしても、その約束が捜査機関に一方的に都合のいいものになる可能性があります。
また、この約束が口約束になっている場合、どちらかが約束を破ることもあり得ます。
そこで、この司法取引の内容についての協議は、原則として弁護人が関与しなければならず、約束をするについても弁護人の同意が必要とされていて、被疑者等だけで一方的に不利な約束をすることにならないよう配慮する規定が置かれています。
また、双方の約束の内容は、検察官、被疑者等、弁護人の三者連名による書面でその内容を明らかにするという規定も置かれています。
5 約束を破った場合の処理・制裁
このような約束をしたとしても、残念ながらどちらかがその約束を守らないという事態はあり得ます。
また、検察官の処分軽減に対し、裁判所がこれを認めない決定をすることもあり得ます。例えば、裁判所が刑の軽い犯罪としての起訴を認めなかったり、検察官の求刑よりも重い刑罰を言い渡したり、略式裁判や即決裁判にすることを裁判所が認めなかったりすることがあり得ます。
このような場合には、(結果的にせよ)約束が守られなかった側は、この約束から離脱することができます。
そして、検察官が不起訴とする約束を破って起訴したり、略式裁判や即決裁判とする約束を破って正式裁判の起訴をしたりした場合、裁判所は公訴を棄却して、裁判を打ち切ることになります。また、検察官が約束を破った場合は、被疑者等が約束によってした他人の犯罪についての供述や提出した証拠等は、その他人の犯罪の裁判でも証拠にすることができないことになります。
他方、被疑者等が約束を破って真実の供述をしなかった場合は、検察官は約束から離脱して本来の処分をすることができるようになるほか、被疑者等が裁判で証人として嘘の供述をした場合は3か月以上10年以下の懲役(偽証罪)に、捜査機関の取り調べに対して嘘の供述をしたり偽の証拠を提出したりした場合は5年以下の懲役になることがあります。
6 協議・合意制度のメリット、危険性
協議・合意制度は、組織犯罪や企業犯罪に関わった者に不起訴などの利益を与えて、「本命」の被疑者に対する捜査に協力させるもので、捜査機関側のメリットは大きく、また自分の犯罪について不起訴等有利な処分を約束してもらえる協力者側の被疑者にも有利なものといえます。
しかし、協力者側の被疑者が、他人を陥れようと思ったり、自分に有利な刑事処分のために捜査機関に迎合したりして、他人にとって不利となる虚偽の供述をする可能性もあります。つまり、冤罪が発生する危険が残るという見解も強く指摘されています。
当事務所所属の小見山大弁護士が
平成28年10月27日の「暴力団追放県民の集い」において
多年にわたる公益財団法人千葉県暴力団追放県民会議の理事としての多大な貢献をたたえられ千葉県警察本部長及び公益財団法人千葉県暴力団追放県民会議理事長の連名で感謝状を授与されました。
ユーカリ総合法律事務所のホームページをリニューアルしました。 様々なお困り事やお悩み事を解決するための一助となるべく、情報を発信してまいります。 今後ともよろしくお願い申し上げます。
〒271-0091
千葉県松戸市本町18番地の4
NBF松戸ビル 7F 【交通アクセス】
TEL : 047-363-7831
FAX : 047-363-7832