お知らせ・スタッフブログユーカリ総合法律事務所からのお知らせです

所有不動産記録証明制度 〜被相続人名義の不動産のリストが取得できるようになります〜

2026.03.05掲載スタッフブログ

1 相続登記の義務化について

2024年(令和6年)41日から、不動産の相続登記が法律で義務化されました。これにより、相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知り」かつ「その所有権を取得したことを知った日」から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。正当な理由がないにもかかわらず申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、相続登記義務化の制度開始(202441日)より前に発生した過去の相続も、義務化の対象になります。過去の相続の場合は、不動産の相続を知った日から既に3年が経過しているものも多いと思われることから、2027年(令和9年)331日までに相続登記をすれば良いとされています。

2 必ず過料が科されてしまうのか

登記官が裁判所に過料通知を行うのは、相続登記の申請義務に違反した者に対し、相当の期間を定めて相続登記の申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、「正当な理由」なく、その期間内にその申請がされないときに限られます(不動産登記規則第187条第1号)。そのため、事前に何の連絡もなく過料が科されることは、現時点ではなされない運用となっています。

正当な理由として、法務省の「相続登記の申請義務化について[1]」には、以下の事由が掲載されています。

(1)相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

(2)相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合

(3)相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合

(4)相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

(5)相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

3 相続人申告登記〜遺産分割が3年以内に成立しない場合

相続人が多い、あるいは相続人間で対立があるなどの理由で、3年以内に相続登記が間に合わない場合、「相続人申告登記」を利用することができます。

この制度を利用すると、自分が相続人であることを法務局に申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したとみなされる制度です。相続人全員の同意が得られていなくても、単独で簡易に手続きが可能であるため、相続人間で意見の対立がある場合には有用な制度です。

ただし、その後に遺産分割協議が成立した場合は、改めてその結果に基づいた登記申請が必要になります。また、相続人申告登記は、単に相続登記の申請義務を緩和するための手続きであり、不動産についての権利関係を公示するものではありません。不動産を売却したりする場合などには、相続人申告登記をしただけでは足りず、別途、相続登記の申請をする必要があります。

相続人申告登記をすると、「被相続人●●の相続人として申出があった者」として、相続人申告登記をした相続人の住所、氏名が、不動産の登記簿に登記されます。申出に登録免許税は不要です。

4 所有不動産記録証明制度〜故人の所有不動産がわからない場合

故人との関係性が薄い等の事情で、故人が所有していた不動産がわからない場合、従前は、自治体ごとに作成されている名寄帳を取得する等の方法を利用するなど、非常に手間がかかっていました。

前述の相続登記の義務化に伴い、相続人の負担を軽減するため、「所有不動産記録証明制度」が新設されました。同制度は令和8年(2026年)22日に施行されています。手数料は、書面請求の場合は、検索条件1件につき、1通当たり1600円です(令和833日時点)。

検索する際には、検索条件として、氏名または名称、ローマ字氏名、住所及び会社法人等番号を指定することができます。検索条件に基づいて、システムから抽出された不動産の情報(管轄登記所、種別(土地・建物)及び不動産の所在、不動産番号)がある場合、同情報が記載された所有不動産記録証明書の交付を受けることができます。

ただし、あくまでも法務局での検索時点で登記に反映されている不動産のみが対象になるので、審査中の登記申請がある場合や、氏名に特殊な異体字(読みが同じでも字形が異なるもの。「齋」「齊」など)が使用されている場合(一定の異体字は、システムで変換可能のようです)、登記記録上の住所・氏名と検索条件の住所・氏名が異なる場合は、検索結果として抽出されない点には注意が必要です。また、検索できる不動産はシステムに登録されている不動産のみなので、コンピュータ化されていない不動産については、検索できません。

5 遺産分割への影響

相続登記の義務化と、所有不動産記録証明制度の施行により、遺産分割でもこれらを留意した対応をすることになります。

被相続人が所有していた不動産が明確でない限りは、基本的には所有不動産記録証明情報制度を使用して所有不動産を検索することになると思われます。また、遺産分割が長期化しそうな場合には、事案に応じて相続人申告登記の申出も検討することになります。

弁護士にご依頼いただければ、所有不動産記録証明書の取得から、争いある相続人間での遺産分割協議、その後の相続登記のための司法書士のご紹介まで、サポートいたします。お困りの相続案件があれば、まずは法律相談をご検討ください。

[1] https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html#mokuji6