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【共同親権の制度が導入されます】 その1

2025.12.10掲載スタッフブログ

1 共同親権制度の導入

離婚後の未成年の子の親権について、これまでは離婚の際には父母のいずれか一方を親権者に決めなければならないとされていました。しかし、民法が改正され、従来通りの「単独親権」のほか、父母の「共同親権」とすることも選択できるようになりました。この改正法は令和8年4月1日から施行される予定です。

 

2 親権者の決め方

(1)協議離婚する際には、父母の共同親権とするか、それともいずれか一方の単独親権とするかについて、父母の協議により決めることになります。

父母の協議で決めることが難しい場合は、家庭裁判所に離婚調停や親権者指定の調停または審判の申立てを行うことができ、裁判所の手続により親権者が決定されます。

裁判離婚の場合は、家庭裁判所が決定します。

(2)「単独親権」か「共同親権」かは、どちらかが原則でどちらかが例外というものではありません。家庭裁判所は、父母と子との関係や、父と母との関係その他一切の事情を考慮して、子の利益という観点から、共同親権にするか、いずれかの単独親権にするかを決定します。

ただし、次のような場合は、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。

・父母の一方から子に対する虐待のおそれがある場合

・父母の一方から他方に対するDV(身体的暴力や心身に有害な影響を及ぼす言動)のおそれの有無やその他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき

 

3 共同親権となった場合の親権の行使方法

(1)親権の内容としては以下のようなものがあります。

ア 子の身上監護

子の居所・転居の決定、進路に影響する進学先の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定、就労許可等

イ 子の財産管理

預金口座の開設や管理等

ウ 子の身分行為の代理

15歳未満の子についての氏の変更の代理

15歳未満の子についての養子縁組の代諾

(2)共同親権の行使方法

通常、離婚後、子は父母のいずれか一方と生活することになります。そして、共同親権となった場合でも、以下のア~ウについては、父母の一方(通常は同居親)が単独で親権を行使することができます。下記ア~ウ以外の事項については、特に取り決めがない場合、父母が協議して親権を行使することになります。

ア 監護教育に関する日常の行為

日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で子供に重大な影響を与えないものは、父母で協議する必要はありません。

例)食事や服装の決定、習い事、観光目的の短期間の旅行、心身に重大な影響を与えない医療行為、インフルエンザ等通常のワクチン接種、高校生の放課後アルバイトの許可など

イ 子の利益のため急迫の事情があるとき

父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては間に合わず、子の利益を害するおそれがある場合にも、親権の単独行使ができます。

例)緊急の医療行為、入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っている場合の入学手続、DVや虐待から避難するための転居など

ウ 家庭裁判所が特定の事項について父母の一方を親権行使者として指定した場   合

父母が共同で親権を行使すべき事項(上記ア、イに当たらない場合)について、父母の意見が対立し、親権行使ができない場合、父母のいずれかの申立により、家庭裁判所が当該事項について、父母の一方を親権者行使者に指定することができます。

(3)子の監護者の指定、監護の分掌

共同親権となる場合、親権行使を巡る離婚後のトラブルをできるだけ少なくするため、以下のような方法をとることが考えられます。

ア 子の監護者を定める方法

同居親を子の監護者と定めた場合は、子の身上監護全般について同居親が単独で決定することとなります。別居親は、子の身上監護に関し口を出すことはできません。

この場合、父母が共同で親権を行使するのは、財産管理と身分行為の代理ということになります。

イ 監護の分掌に関する取り決めをする方法

「監護教育に関する日常の行為」以外の身上監護について、特定の事項を父母の一方に委ねると決めたり、父母間の分担方法を定めることができます。

(4)離婚時に共同親権を選択することとなったとしても、前述のとおり、「監護教育に関する日常の行為」は同居親が単独で行うことができますので、些細なこともいちいち離婚した父母間 で協議しなければならないというわけではありません。

ただ、「監護教育に関する日常の行為」以外については、夫婦間の協議が必要となりますので、後々トラブルになることがあらかじめ予想できる事項があれば、離婚時に取り決めをしておいた方がスムーズかもしれません。

そして、共同親権となる場合は、単独親権の場合よりも更に、子の利益という観点から父母は互いの人格を尊重し協力し合わなければならないということを、父母のいずれも念頭に置く必要があります。