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養育費の支払いに関するルールが変わります

2025.09.22掲載スタッフブログ

父母の離婚後の子の養育に関し、民法等の法律が改正され、令和8年5月までに施行される予定です。その改正の一つとして、子どもの養育費の支払いに関するルールが見直されることになりました。厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によれば、養育費の受給率は、母子世帯で28.1%、父子世帯で8.7%にとどまり、実効性のある養育費の確保が課題となっていました。そこで、養育費の支払確保に向けて、民法等の法律が改正されました。

 

1 差押え手続が容易に

改正前の法律では、離婚の際に父母の間で私的に養育費の取り決めをしていたとしても、その後、別居親が養育費の支払いを怠った場合、公正証書や、家庭裁判所の調停調書、審判書などの債務名義がない限り、別居親の財産を差し押さえることができませんでした。

そこで、今回の改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与され、上記のような債務名義がなくても、養育費の取り決めの際に父母の間で作成した合意書などの書面に基づいて、差押え手続を申し立てることができるようになりました。先取特権が付与される具体的な養育費の上限額は、今後法務省令で定められますが、子ども1人当たり月額8万円が上限となる見込みです。

なお、改正法施行前に養育費の取り決めがされていた場合には、改正法施行後に生ずる養育費に限って改正法が適用されます。

 

2 「法定養育費」制度の導入

今回の改正により、離婚の際に養育費の取り決めをしていなくても、別居親に対して「法定養育費」を請求することができるようになりました。具体的な法定養育費の額は、今後法務省令で定められますが、子ども1人当たり月額2万円となる見込みです。

また、法定養育費債権が先取特権となるため、法定養育費の支払がされない場合には、差押え手続を申し立てることができるようになりました。

なお、法定養育費の規定は、改正法施行後に離婚した場合に適用されますので、改正法施行前に離婚した場合には、従来と同様に、父母の協議や家庭裁判所の調停・審判手続により、養育費の額を取り決めることになります。

 

3 収入情報の開示や執行手続のワンストップ化

家庭裁判所の調停・審判手続では、父母の収入を基礎として、養育費の額を算定することになりますが、収入に関する資料が任意に提出されない場合に、適正な額を算定することが困難となり、手続が長期化することが問題となっていました。

そこで、手続をスムーズに進めるために、今回の改正により、家庭裁判所が当事者に対して収入情報の開示を命じることができるようになりました。

また、養育費を請求したいけれど、別居親の現在の勤務先が分からず、給与債権の差押え手続ができない場合には、改正前の法律では、財産開示手続、第三者からの情報取得手続(市区町村に対し別居親の給与情報の提供を命じる手続)などの手続をそれぞれ申し立てて、別居親の勤務先を調査する必要があり、手続が複雑なため、養育費の回収が容易ではないことが問題となっていました。

そこで、今回の改正により、差押え手続を行う場合には、地方裁判所に対する1回の申立てで、①財産開示手続→②第三者からの情報取得手続→③給与債権の差押え手続という一連の手続をワンストップで行うことができるようになりました。

 

離婚の際に養育費の取り決めをしていなかったケース、別居親に養育費を請求したが支払を拒否されてしまったケースなどでは、今回の法改正により養育費の支払がスムーズに受けられる可能性がありますので、子どもの養育費が支払われずお困りの方は、専門家にご相談ください。