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「あなたの周りに空き地や空き家はありませんか?-所有者不明土地問題に関する新しい制度が始まりました-」

2024.12.13掲載スタッフブログ

近年、相続登記や住所変更登記が未了であることが原因で、所有者不明の土地・建物が増えています。また、総務省が2023年に実施した「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は過去最多の9002000戸(千葉県内の空き家数は394000戸)で、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は全国で13.8%(千葉県内の空き家率は12.3%)であり、今後も増加する可能性が高いでしょう。他方で、このまま空き家を放置し続けると、ゴミの不法投棄、雑草の繁茂、害虫の発生、建物の倒壊などによって近隣住民に悪影響を及ぼすおそれがありますし、空き地や空き家を活用した公共事業や買取りを希望する民間業者の取引を阻むことにもなります。

このような問題に対処するため、改正民法では、個々の土地・建物の管理に特化した財産管理制度(①所有者不明土地・建物管理制度と②管理不全土地・建物管理制度)が新設され、20234月に施行されました。

まず、所有者不明土地・建物管理制度とは、所有者を特定できない土地・建物や、所有者が所在不明となっている土地・建物がある場合に、利害関係人が、土地・建物の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行い、裁判所が、所有者不明土地・建物の管理命令を発令し、管理人を選任する制度です。

利害関係人が申立てを行うことができますが、例えば、公共事業の実施者など不動産の利用・取得を希望する者や、共有地における不明共有者以外の共有者が利害関係人に該当すると考えられます。

所有者不明土地・建物管理人の権限は、原則として土地・建物の保存、利用、改良行為に限られますが、裁判所の許可があれば、土地・建物の売却や取壊しなどの処分行為を行うことも可能なため、この制度の活用によって、公共事業や民間取引の活性化などが期待されます。

次に、管理不全土地・建物管理制度とは、所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利・利益が侵害されまたは侵害されるおそれがある場合に、利害関係人が、土地・建物の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行い、裁判所が、管理不全土地・建物管理命令を発令し、管理人を選任する制度です。

ここでいう利害関係人とは、例えば、ひび割れや破損が生じている擁壁を土地所有者が放置しており、隣地に倒壊して被害を受けるおそれがある隣地所有者や、ゴミが不法投棄された土地・建物を所有者が放置しており、臭気や害虫発生による健康被害を受けている近隣住民などが該当すると考えられます。

管理不全土地・建物管理人の権限は、原則として土地・建物の保存、利用、改良行為に限られ、土地・建物の処分を行う場合には、所有者の同意が必要となります。

この制度の活用によって、ひび割れや破損が生じている擁壁の補修工事やゴミの撤去・害虫の駆除を管理人が行うことができ、周辺の環境改善にもつながります。

なお、区分所有建物については、所有者不明建物管理制度と管理不全建物管理制度のいずれも適用されないため、分譲マンションなどの区分所有建物の専有部分及び共用部分について、管理命令を発令できないことには注意が必要です。

所有者不明の土地・建物や管理不全状態の土地・建物についてお困りの方は、専門家にご相談ください。