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成年後見制度について―本人の状況に応じた制度の活用が必要です―

2024.10.23掲載スタッフブログ

Q1 父の認知症が進行し、父自身が財産管理することができなくなってしまったため、専門家に財産管理を任せることを考えています。どのような制度を使えば良いでしょうか?

 

A1 法定後見制度の活用が考えられます。

財産管理や身上監護について、判断能力が不十分になった場合に保護・支援するための制度が成年後見制度です。これには、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。

法定後見:本人が判断能力を欠いた後に、成年後見人が本人を法律的に支援する制度です(※)。

任意後見:本人の判断能力が十分な時に、あらかじめ、任意後見人や委任する事務の内容を契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度です。

※保佐人、補助人といった要件・内容等の異なる制度もあります。

 

Q1の場合には、既に判断能力を欠いている状況であり、法定後見制度の活用が考えられます。

 

Q2 成年後見制度を利用するには、どのような手続が必要になりますか?

 

A2 法定後見の場合、本人、配偶者、4親等内の親族等が家庭裁判所に後見等の開始の申立てを行い、裁判所により後見人が選任されることで、法定後見が開始します。

なお、任意後見の場合には、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見人の予定者等が公正証書により任意後見契約を締結します。その後、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立て、家庭裁判所により選任されることで、任意後見が開始します。

 

 Q3 後見人にはどの範囲の財産管理を任せられますか?

 

A3 法定後見の場合、財産に関するすべての法律行為の代理権を有するため、包括的な財産管理が可能になります。

なお、任意後見の場合には、契約で定めた範囲の代理権を有するため、本人の状況や希望に合わせて代理権の範囲を定めることができます。

 

 Q4 父の後見が開始した後、父の財産についてトラブルが生じ、相手方から訴訟を提起されました。後見人が本人に代わって訴訟に応じることになりますか?

 

A4 法定後見の場合、法定代理権を有するため、訴訟行為を代理することができます

任意後見:基本的に法定代理権がなく、訴訟行為を代理できません(※)

※本人から訴訟委任を受けた弁護士である任意後見人であれば、訴訟代理が可能です。

  

このように、法定後見と任意後見では、手続きや内容に違いがあるため、本人の状況に応じた制度を選択することが必要になります。また、紛争が生じた場合の対応にも違いが生じるため、本人の財産についてトラブルが生じた場合の備えも検討しておくことがお勧めです。