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離婚をした場合の自分と子どもの苗字や戸籍

2024.08.13掲載スタッフブログ

1 婚姻をするとどちらか一方の配偶者の苗字(氏)を名乗ることになります。多くの夫婦において、妻が夫の氏を称することになることから、以下では婚姻時に妻が夫の氏を称するケースで説明をします。(夫が妻の姓を称している場合、夫と妻を入れ替えても同じです。)

2 夫婦の苗字

離婚をすると、婚姻時に苗字を変更した妻は、婚姻前の苗字に戻ります(民法767条1項)。原則として、婚姻前の戸籍に戻ることになります。しかし、婚姻前の戸籍が妻の両親が共に死亡している等で除籍となっている場合、婚姻前の戸籍に戻ることができないので、新戸籍を編製することになります。また、妻が新戸籍の編製を申し出た場合も新戸籍が編製されます。子どもがいる場合に、子どもを妻と一緒の戸籍にしようと考えているときは、妻が従前の戸籍に戻るのではなく、新戸籍の編製をすると良いです。戸籍は夫婦及び子どもごとに編成されるため、妻の親と子どもが同じ戸籍に入ることはできず新戸籍の編製が必要になるからです。

もっとも、当然に婚姻前の苗字に復氏するとなると、妻がこれまでの社会生活で築き上げてきたものに諸々の不都合が生じること(例えば、婚姻時の氏名で働いて得てきた信用、名声が復氏によって失われてしまう可能性や預貯金、クレジットカード等の名義変更をすべて行わなくてはならない等)から、離婚の日から3か月以内に離婚の際に称していた氏を称する届出をすることにより、婚姻時の苗字を名乗り続けることができます(婚氏続称。民法767条2項)。

離婚の日から3か月を経過した後に苗字を変更しようとする場合、「氏の変更許可申立て」を行う必要があり、やむを得ない事由がなければ苗字の変更は認められません(戸籍法107条1項)。苗字を変更するためのハードルは高くなりますので、婚氏を続称するかどうかは慎重に検討してください。

離婚時に婚氏続称を選択し、その後、婚姻前の苗字への変更を求めて氏の変更許可申立てを行った場合、離婚の場合には復氏するのが原則であることから、日時の経過によって婚氏が離婚後の呼称として社会的に定着している場合を除き、戸籍法107条1項のやむを得ない事由の解釈は、通常の氏の変更の場合よりも緩和されます(大阪高決昭和52年12月21日)。

なお、婚姻時に苗字が変わっていない夫は、離婚をしても苗字は変わりません。

3 子どもの苗字

離婚時に未成年の子どもがいる場合、子どもの親権者をどちらにするかを決めますが、妻が子どもの親権者となったとしても、子どもの戸籍は手続をしなければ夫の戸籍のままとなり、妻が復氏をしても子どもは夫の苗字のままとなります。夫の戸籍にいる子どもの欄に親権者が妻であることが記載されることになります。

子どもの苗字を妻の苗字に変更したい場合、「子の氏の変更許可申立て」(民法791条1項)をする必要があります。子どもが15歳以上である場合には子ども自身が、子どもが15歳未満である場合は法定代理人である親権者が申立てを行うことができます(民法791条3項)。

子どもの苗字の変更が認められるかどうかは、子どもの苗字の変更が子どもの福祉に適うものかどうかという観点から審理されます。夫婦が離婚して妻が婚姻前の苗字に戻り、かつ、子どもの親権者となった場合に、子どもを妻の苗字に変更しようと子の氏の変更の申立てを行ったときは、子どもの苗字の変更が認められるケースがほとんどです。

婚氏続称を選択した場合、妻は夫と同じ苗字の呼称であっても、夫とは別の戸籍になります。子どもの親権者が妻となった場合でも、子どもは夫の戸籍のままとなりますので、妻の戸籍に移したい場合には、子の氏の変更許可申立ての手続を行い、妻の戸籍に移す必要があります。

以上