夫婦の一方が不貞行為を行った場合、それが不法行為(民法709条)にあたるとして、有責配偶者(不貞行為をした配偶者)や不貞行為の相手方に対し、損害賠償としての慰謝料を請求することができます。
ここにいう不貞行為とは、典型的には性行為・肉体関係を指しますが、必ずしも肉体関係がある場合に限られるわけではありません。裁判例上、どのようなケースで不貞行為が認められるのか、行為類型ごとにみていきます。
ここからは、有責配偶者をA、その相手方をBとして説明します。
1 性交類似行為
東京地裁平成23年4月26日判決(平成22年(ワ)第2485号)は、性交を伴う不貞関係にあったとは認め難いものの、AとBがホテルに行き、一緒に風呂に入ったり、AにおいてBの体に触れるなどの性的行為を行っていたことを理由に、法的に保護されるべき婚姻生活の平穏を害する不法行為をしたものとして、慰謝料100万円が認められました。
2 離婚要求
東京地裁平成20年12月5日判決(平成20年(ワ)第2040号)は、BとAとの間に、性的肉体的交渉自体は認められないものの、婚姻を約束して交際し、Aに対し、妻との別居及び離婚を要求し、キスをしたことが認められるとして、これらが不法行為を構成するとし、未だ離婚が成立していないこと、Bに積極性があることを理由に、慰謝料250万円を認めました。
このように、性交、肉体関係以外でも、性交に類似する行為や、継続的な交際、配偶者との離婚要求といった行為は、不貞行為となる可能性があります。
3 愛情表現メールの送信行為
東京地裁平成24年11月28日判決(平成23年(ワ)第19363号)は、BがAに対し、「逢いたい」「大好きだよ」等の愛情表現を含む内容のメールを送信した行為について、AとBが身体的接触を持っているような印象を与えるものであり、これを配偶者が読んだ場合に婚姻生活の平穏を害するものであるとして、不法行為責任を負うものとし、慰謝料として30万円を認めました。
4 結婚を希望して交際を継続
東京地裁平成17年11月15日判決(平成16年(ワ)第26722号)は、AとBは肉体関係を結んだとまでは認められないものの、互いに結婚することを希望してAと交際したうえ、周囲の説得を排して、Aとともに、原告に対し、Aと結婚させてほしい旨懇願し続け、その結果、原告とAとは別居し、まもなく原告とAが離婚するに至ったものと認められ、Bのこのような行為は、婚姻生活を破壊したものとして違法の評価を免れず、不法行為を構成するとして、慰謝料70万円を認めました。
5 密会行為
東京地裁平成21年7月16日判決(平成20年(ワ)第24025号)は、ホステスのBが、Aに妻がいることを知りつつ、勤務時間外に会って食事や映画鑑賞、喫茶を共にしていたという事例で、婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性がないとして、不法行為の成立を否定しました。
上記の通り、性交・肉体関係でなくても、不貞行為が認められる場合があります。
どのような場合に認められるかについて、上述の東京地裁平成17年11月15日は、次のように示しています。
「婚姻関係にある配偶者と第三者との関わり合いが不法行為となるか否かは、一方配偶者の他方配偶者に対する守操請求権の保護というよりも、婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益を保護するという見地から検討されるべきであり、第三者が配偶者の相手配偶者との婚姻共同生活を破壊したと評価されれば違法たり得るのであって、第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえないと解するのが相当である。」
配偶者の浮気・不倫が疑われる等でお困りの場合は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
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