取扱業務-交通事故交通事故に関する弁護士相談事例をご紹介します。

交通事故と医療過誤

相談内容

 私の夫が、先日交通事故に遭いました。頭を打ったようで、痛みを訴えていたのですぐに病院で診察を受けました。医師は、夫の意識がはっきりしていて元気な様子であったことから、傷の消毒等簡単な手当てをしただけで診察を終わりました。しかし、帰宅後、しばらくして夫の様子がおかしくなったので、救急車で病院に行ったのですが、夜中に亡くなってしまいました。後でわかったのですが、事故の時に頭蓋骨骨折をしていて、その付近から出血をしていたことが死因でした。医師が出血を見逃したと思います。交通事故を起こした相手と病院それぞれを訴えたいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。

結果・回答

 交通事故を起こした加害者には不法行為(民法709条)が、頭蓋骨骨折等を見逃した医師にも不法行為が成立します。

 交通事故と医療過誤が競合した場合、各不法行為は別々に発生していますが、客観的にみて一体ないし不可分の損害を被害者に与える関係にあれば、共同不法行為(民法719条)が成立すると考えられています。もっとも、放置しても死亡しない程度の傷害を負った被害者が、医療過誤によって死亡したといえる場合には、共同不法行為は成立しないでしょう。その場合は、個々に損害賠償を請求することになります。

共同不法行為が成立すると、不法行為者は連帯して損害を賠償する責任を負います。すなわち、全額をどちらか一方に対して請求することができます。加害者側は、結果発生に対する寄与の割合をもって損害額を按分して責任を負うべき範囲を限定することはできません(最高裁平成13年3月13日判決)。

 交通事故、医療過誤それぞれに不法行為が成立するのか、それが共同不法行為になるのかどうか、難しい判断になりますので、医療事故の調査から弁護士に依頼すると良いでしょう。

※朝日まつど新聞 平成27年12月号掲載