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受領権限のない者への弁済の効力

相談内容

 私は、以前から付合いのあるA社の社長から300万円を借りたのですが、社長側の都合で、借用書の貸主は社長の息子が代表者になっているB社となっていました。

 返済は10年間で月々分割して返済していくことになっていました。最初は、B社名義の口座へ支払いをしていたのですが、2年くらい返済をした頃に社長からA社の口座に支払いをしてほしいと言われ、特に何も考えず、言われたとおりに返済する口座を変え、返済を続けてきました。

 社長が半年前に亡くなり、A社は社長の妻が引き継ぐことになったそうですが、相続のことで妻と息子が揉めていると聞いていました。最近になって、B社から借金の残金を一括して支払うよう求める請求書が来ました。私としては、社長が指定した口座に毎月きちんと支払っていたので、何が何だかわかりません。支払わなければならないのでしょうか。

結果・回答

 まず、借用書の貸主の名義がB社となっているので、今回の金銭消費貸借の貸主はB社となります。A社社長が実際にお金を出していたのだとしても、それはA社社長がB社に貸したお金をあなたが借入金として受け取ったと扱われる可能性が高いでしょう。

 貸主がB社だとすると、A社には弁済金の受領権限はありません。A社社長が弁済口座を変えるよう指示してきたことも、弁済受領権限のない者からの指定ですので、新指定口座へ弁済しても有効な弁済とは扱われません。ただし、A社の口座への弁済金がB社へ送金等され、B社が利益を受けていれば、その分は有効となります(民法479条)。有効と扱われなければ、その分はA社に不当利得返還請求(同法703条)をしていくことになります。

※朝日まつど新聞 平成28年5月号掲載