取扱業務-相続・後見相続・後見に関する弁護士相談事例をご紹介します。

遺留分減殺請求の時効消滅と成年後見の申立て

相談内容

亡きAが、その財産を全て長男Yに相続させる遺言書を作成後死亡しました。Aには妻Xはいますが、認知症が進んでいて遺留分減殺請求権(遺留分に相当する財産の返還を受ける権利)を行使していません。Aが亡くなってからもうすぐで1年経ちXの遺留分減殺請求権が時効消滅する可能性があります。

 Xの親族として何とかしてあげたいと考えているのですがどうしたらいいですか。

結果・回答

民法158条は、時効期間の満了前6か月以内の間に「成年被後見人」に法定代理人がいないときは、その成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6か月を経過するまで、時効は完成しない、と定めています。本件の場合は、妻Xはまだ、後見開始の審判がされていないので、「成年被後見人」とは言えませんが、この点最高裁が、時効の期間の満了前6か月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がいない場合にも、時効期間満了前の後見申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項を類推適用し、時効は完成しないと判断しました(平26.3.14判決)。

 したがって本件の場合にも、まずは、Aの死後1年経過する前に、家庭裁判所にXの成年後見開始の申立てを行うことをお勧めします。

 申立手続き、必要書類についてはご不明な点があれば弁護士にご相談下さい。