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住所、氏名等の秘匿制度

2023.03.06掲載スタッフブログ

   これまで、性犯罪の被害者等が、加害者に対し損害賠償を求めて訴えたいと考えても、自分の住所や氏名等を相手方に知られることをおそれて、訴訟を提起することをあきらめるということもあったと思います。

 基本的には、訴状には原告の住所・氏名を記載しなければならず、裁判所からの書類を受領するための送達場所(住所)の届出が必要で、提出された訴訟記録は相手方も閲覧することはできることになっていました。

 しかし、民事訴訟法等の一部を改正する法律の成立により(施行日は令和5年2月20日)、当事者等がDVや犯罪被害者等である場合に、住所、氏名等の情報を相手方に秘匿したまま民事訴訟手続を進めることができる制度が創設されました。

1 秘匿決定の対象

  「申立て等をする者又はその法定代理人」の「住所等」と「氏名等」です。

2 秘匿決定の要件

  住所・氏名等が当事者に知られることによって、申立て等をする者又はその法定代理人が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあることが必要です。

具体例:

  • 住所のみ秘匿の例:DVの被害者が加害者に対し訴訟を申し立てる場合等。

避難先の住所が相手方に知られ、被害者が住所地に追いかけられ更なる暴力を受ける可能性が高い等。

  • 氏名・住所の秘匿の例:性犯罪被害者が、加害者に対し損害賠償請求訴訟を申し立てる場合等。

もともと相手方は被害者の氏名も知らなかったのに、名前を知られることで、二次的な被害が生じる可能性が高い等。

3 手続・効果

 裁判所より秘匿決定をしてもらうためには、まず、秘匿決定の申立てをする必要があります。

 要件を充たした場合に裁判所が秘匿決定をします。秘匿決定で、秘匿される住所又は氏名につき代替事項が定められます。

 訴状には、秘匿決定で定められた代替事項を記載すれば足り、真の住所又は氏名は記載しなくてもよくなります。

 また、代替事項が記載された訴状が送達されれば、送達は有効とされ、代替事項が記載された判決で、強制執行も可能です。