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競業避止義務

2022.03.09掲載スタッフブログ

<相談 事例>

  私は会社員として葬儀社に20年務めてきましたがこの度退職することにしました。知識や経験を生かして同業他社に就職しようと思っているのですが、元いた会社からは『営業区域内(関東一円)での同業者への就職・開業は許さない』『同業者に就職したり開業する場合には必ず損害賠償請求する』と言われています。在職中に特段「競業避止」の念書など差し入れたこともありません。私は営業担当として取引業者(墓石屋など)やお寺さんなどから信頼を頂いておりますし、他の仕事をやったこともありませんので同じ葬儀関係の仕事に就職あるいは開業を考えているのですが法的な問題はありますか。

<回答 内容>

  いわゆる『競業避止義務』の問題です。退職者の職業選択の自由・営業の自由と会社の利益(営業秘密など)との比較考量の問題になるでしょう。設例の事案で再就職・開業が認められないとこれまで退職者が培ってきた知識や経験が生かせなくなってしまいます。一般的には不当な方法で顧客を奪うなどでもしない限り法的問題がない(損害賠償支払義務がない)事案と言えるでしょう。

  最高裁判例(平成22年3月25日最高裁第1小法廷判決)でも金属機械部品の製造などを業とするX会社を退職後の競業避止義務に関する特約の定めなく退職した従業員において、別会社の代表取締役となってX会社と同種の事業を営み、その取引先から継続的に仕事を受注した行為は,それが上記取引先の営業担当であったことに基づく人的関係を利用して行われたものであり、上記取引先に対する売上高が別会社の売上高の8~9割を占めるようになり、X会社における上記取引先からの受注額が減少したとしても次の①②などの判示の事情の下では、社会通念上自由競争の範囲を逸脱するものではなく、X会社に対する不法行為にはあたらない。

①上記従業員がX会社の営業秘密にかかる情報を用いたり、その信用を貶めたりするなどの不当な方法で営業を行ったものではない、②上記取引先のうち3社との取引は退職から5ヶ月ほど経過したのちに始まったものであり、残りの1社についてはX会社が営業に消極的な面もあったのであって、X会社と上記取引先との自由な取引が阻害された事情はうかがわれず、上記従業員においてその退職直後にX会社の営業が弱体化した状況をことさらに利用したともいえない。

  等と判示されています。