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支払われなくなった養育費・・・あきらめていませんか?

2020.10.20掲載スタッフブログ

今年4月1日に改正民事執行法が施行されたことにより,養育費の回収のための手段が増えました。

以下では様々なQ(想定質問)をもとに,各手段をご紹介します。ぜひご自身に当てはまるQを探してみて下さい。

 

Q1.1年前に離婚した元夫との間に子供がいます。離婚時に養育費については取り決めをして公正証書にしましたが,元夫から全く支払いがありません。相手に支払わせる方法はあるでしょうか?

A1.公正証書を作っているとのことなので,これをもって,元夫の財産に強制執行していくことが考えられます。

前記公正証書をもって強制執行をするためには,公正証書にあらかじめ,例えば,「養育費の支払いが遅滞した場合には元夫は強制執行に服する」といった内容の強制執行認諾文言を付しておく必要があります。

また,強制執行に当たっては,元夫の財産の情報が必要となりますが,これを得るための手続として,財産開示手続を申立てることが考えられます。今回の改正により強制執行認諾文言付の公正証書があれば,財産開示手続を申し立てられるようになりました。

財産開示手続は,裁判所に申し立てることで,債務者(本Qにいう元夫)を財産開示期日に裁判所に出頭させ,債務者に自己の財産状況を陳述させることができる手続です。

元夫が財産開示手続で自分の財産について陳述すれば,それによって判明した財産に強制執行していくことで,養育費の回収が可能です。

 

Q2.養育費を支払ってこない元夫が不動産を相続したらしいという話を聞きましたが,相続した不動産から養育費を支払ってもらうことはできないでしょうか?

A2.元夫が相続した当該不動産に対し強制執行をしていくことが考えられます。強制執行には,不動産の地番等の情報が必要であり,当該情報を管理するのは不動産の所在地の登記所ですが,現時点で,登記所から元夫の所有不動産の情報を一覧で取得する方法はありません。

ただ,今後,当該情報取得のための手段として,不動産に関する第三者からの情報取得手続の申立ができるようになります。この手続は今回の改正により新設された制度です。現時点では,まだ申立できないのですが,2021516日までの間にできるようになる予定(開始日未定)です。

これが認められるためには,A1でご説明した財産開示手続を先に行い,これでも養育費の回収のための情報が取得できなかったことが必要となりますが,認められれば,所有者(本Qでいう元夫)の名前で整理された不動産の情報を取得することができます。

 

Q3. 養育費を支払ってこない元夫が,今でも働いているらしいとの情報は入ってきていますが,就業先がわかりません。元夫の給料から,養育費を回収することはできるでしょうか?

A3.元夫の給与債権に対し強制執行をしていくことで,将来分も含めて,継続的に,元夫の給与から養育費を回収することができるようになります。そのためには元夫の勤務先情報が必要となります。

そして,勤務先を調べる方法として,給与債権に関する第三者からの情報取得手続を申し立てることが考えられます。この手続も,今回の改正により新設された手続です。不動産に関する第三者からの情報取得手続(A2)と同様,財産開示手続(A1をご参照ください。)を経る必要があります。

もっとも,給与債権の差し押さえについては,差押禁止の範囲(給与の2分の1,又はこれが33万円を超える場合には給与のうち33万円)があることに注意が必要です。

 

Q4. 元夫の預金口座について,取引銀行までは分かりますが支店名や口座番号までは分かりません。預金から養育費を支払ってもらうことはできないでしょうか?

A4. 預金に強制執行していくことで,養育費を回収することができますが,強制執行に当たり支店名や口座番号等の情報が必要となります。そして,これを取得するため,預金債権等に関する第三者からの情報取得手続きを申し立てることが考えられます。

この手続も,今回の改正により新設された手続であり,不動産に関する第三者からの情報取得手続(A2)と同様,財産開示手続(A1をご参照ください。)を経る必要があります。

これが認められれば,預貯金債権の存否,取扱店舗,預貯金の種別,口座番号及び額(本Qでいう元夫名義の預金口座情報)を取得することができます。これにより判明したBさん名義の預金口座に強制執行をしていくことで,養育費を回収することができます。

預金債権への強制執行は給与債権に対するもの(A3)と異なり,一回きりの回収になりますが,預金債権には,差押禁止の範囲が存在しませんから,未払い分も含めた大きな額の回収が期待できます。

 

まとめ

今回の改正により,養育費取立のための情報を取得する方法が増えました。養育費の回収を今まであきらめていた方も,今回の改正により回収が可能となるかもしれません。お心当たりがございましたら,ぜひ一度,当事務所にご相談ください。