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法務局における自筆証書遺言保管制度が本年7月から始まります

2020.06.11掲載スタッフブログ

これまで自宅で保管されることの多かった自筆証書遺言について、遺言者の申請があれば法務局で保管するという制度が新設されました(令和2年7月10日施行)。

この制度を利用することにより、自筆証書遺言の紛失や、遺言者以外の者による改ざん・破棄のおそれもなく、遺言書が安全に保管されることになります。

保管の申請は、遺言者の住所地、本籍地、または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局(遺言書保管所)にすることができ、申請の際は遺言者本人が出頭する必要があります。手数料は1件につき3,900円です。

遺言者は、預けた自筆証書遺言の内容を書き換えたいときは、法務局に対し、保管の申請を撤回して、遺言書を返してもらうことができます。この場合は、書き換えた遺言について、あらためて手数料を支払い保管申請を行うことになります。

遺言者が亡くなった後、相続人は、法務局において、保管されている遺言書があるか否かを確認することができ、保管されている遺言書があれば閲覧・交付を請求することができます。遺言者から遺贈を受けた者(受遺者)も、自分を受遺者とする遺言が保管されているかについて確認し、そのような遺言があれば閲覧・交付請求を行うことができます。そのほか、遺言執行者に指定されている者も同様です。このような遺言書の保管確認や閲覧、交付請求は、当該遺言書を保管している法務局に限らず、全国のどの法務局でも可能です。ですので、遺言者は、遺言書が法務局で保管されているということを相続人、受遺者あるいは遺言執行者にわかるようにしておけばよいのです。

法務局で保管されていない自筆証書遺言については、相続発生後、相続人等が家庭裁判所に遺言を提出して「検認」の申立を行う必要がありますが、法務局で保管されている自筆証書遺言については検認手続は不要となります。

なお、法務局は、申請された遺言が自筆証書遺言としての法律上の要件を満たしているかを外形的に確認したうえで保管しますが、遺言の内容には一切関与しませんし、遺言者に遺言能力があるか否かをチェックするわけでもありません。ですので、保管された遺言の有効、無効をめぐる争いを完全に防止することはできません。ただ、皆さんが思いを込めて作成した遺言が安全に保管されるというのは大きなメリットですし、手数料の面でも利用しやすいと思いますので、自筆証書遺言を作成される方は併せて保管制度の利用を検討してみてもいいのではないでしょうか。