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不貞行為と離婚の慰謝料

2019.04.17掲載スタッフブログ


1 離婚慰謝料に関する最新判例
 「離婚慰謝料 特段の事情ない限り、配偶者の不倫相手に請求できず 最高裁が初判断」(毎日新聞2019年2月19日)などのニュースをご覧になり,不倫されても慰謝料が請求できないの!?と思われる方もいるかも知れません。
 〇最高裁平成31年2月19日第三小法廷判決
 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/422/088422_hanrei.pdf
 今回,この判決を踏まえて,不貞行為に対する慰謝料請求について解説します。

2 不貞行為と不法行為責任
(1)法律上の根拠
(不法行為による損害賠償請求)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 実務上,不貞行為は不法行為として扱われるため,この条文から不倫相手に慰謝料請求ができることとなります。
 少し分析的にいいますと,不貞行為により「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法律上保護される利益を侵害した者」は,損害を賠償する責任を負います。
(*諸説ありますが,内田貴 『民法Ⅳ補訂版』 東京大学出版会 26頁 によります)
 ここで注意すべき点を指摘しておきます。不貞行為による不法行為は「婚姻共同生活の平和」を侵害した場合に限られるので,既に冷え切った婚姻関係の下(例えば,性格の不一致などで先に別居していたときなど)では,「婚姻共同生活の平和」が既にないので,不貞行為が不法行為となりません。
 また,不法行為者は損害を賠償する責任を負うので,損害が発生しないと賠償されません。そして,損害の範囲は,不貞行為が原因で受けた損害のみとなります。(「不法行為と損害の因果関係」が必要と言い換えられます。)そこで,次に損害について考えていきます。

(2)不貞行為による損害
 不貞行為により婚姻相手が取られてしまったことが損害とお考えの方もいるでしょう。確かに,お気持ちは察しますが,婚姻相手は物ではないので,法的にこのような損害は認められません。
 そこで,不貞行為による損害は,次の2つに大別できます。
   ①婚姻共同生活の平和の破壊による直接的な精神的苦痛
   ②婚姻共同生活の平和の破壊の結果の婚姻関係破綻(=離婚など)による精神的苦痛
 一般に,①の損害に対する請求を不貞慰謝料,②の損害に対する請求を離婚慰謝料と区別されることが多いようです。
 ②は①の次に続くものなので,これのように分ける必要がないようにも思えます。
しかし,この区別は「時効」によって全く異なる結果を迎えます。

(3)不法行為の時効
 時効(消滅時効)は,権利を行使せずに一定期間経過すると権利が消滅する制度のことです。不法行為による損害賠償請求権は,損害と加害者を知った時から,請求せずに3年経過すると権利が消滅します(民法第724条)。
 具体的には,①の損害については,損害の発生日が不貞行為を知った日なので,不貞行為を知って不倫相手を突き止めた後3年以内に不倫相手に慰謝料を請求しなければ,請求権が消滅します。
 一方,②の損害について,損害の発生日は離婚した日なので,不倫相手を突き止めた日と離婚した日のいずれか遅い方の日から3年以内に不倫相手に慰謝料請求しなければ,請求権が消滅します。

3 最新判例の分析
(1)事案の概要
 結婚15年後,妻が自らの勤務先の男性と不貞行為に及ぶようになり,その約1年後に夫が妻の不貞関係を知った。その時点で,妻と不倫相手は不貞関係を解消した。そして,不貞関係解消の5年後に夫婦は離婚し,夫が不倫相手に対し離婚に伴う慰謝料請求した,という事案でした。
 少し補足しますと,不貞関係の解消は請求から5年以上も前のことなので,不倫相手に対する①の損害に対する慰謝料,つまり不貞慰謝料は請求できない状況でした。そこで,②の損害に対する慰謝料,つまり離婚慰謝料を請求したという経緯です。

(2)最高裁の判断
 最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄」と理由を付して,「当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」。不倫相手に対して,このような「特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」と結論付けています。

(3)判例の分析
 つまり,最高裁は,離婚は夫婦間で決められ,不倫相手が離婚を余儀なくさせるような振る舞いがなければ,離婚させることを意図していたといえず,特段の事情がなくなり,不倫相手は離婚の結果に対する責任を負わないとしています。
 このような最高裁の論理構造から推察すると,②の「婚姻共同生活の平和の破壊」が当然「離婚」の結果をもたらさないと考えているといえるでしょう。
 つまり,訴える者(原告)は,不倫相手による不貞行為と夫婦の離婚との因果関係の証明が別途必須ということでしょう。

(4)判例の影響
 このように本判例は,不倫相手に対する離婚慰謝料の請求について,因果関係の証明というハードルを明確にしています。一方,不貞慰謝料について何も触れていません。
 つまり,不倫相手に対する不貞慰謝料請求権が時効消滅していなければ,不倫相手に対して不貞慰謝料の請求は当然可能です。
 よって,不倫相手に対する慰謝料の請求は,不貞行為が解消されて3年以内に請求するように注意すべきであり,この場合でも不貞行為が請求の3年以内であることの証拠が必要でしょう。
 また,不貞行為解消の3年経過後の請求であれば,不倫相手が離婚を意図していたといえるような証拠を集めるように努力する必要がありそうです。